悪玉コレステロールよりも悪玉のコレステロール

レムナントコレステロールがテレビ番組で取り上げられてから、セミナーなどで急にレムナントコレステロールの質問が増えました。番組の取り上げ方のせいもあって、これまで動脈硬化の原因はLDLコレステロールと伝えられていたのに、別のコレステロールが原因であったという印象を持たれたようです。私たちも含めて、間違い情報を発信してきたように思われているのではないかと気にもなりつつ、一般対象のセミナーではあるものの、できるだけ詳しく伝えるようにしています。
レムナントコレステロールは、最新情報として発表されるような発見ではなく、24年前に日本人が発見しています。ただ、レムナントコレステロールという名前が表に出て、一般に伝えられるようになったのは最近のことです。
正式名称は「レムナント様リポ蛋白コレステロール」といいます。「RLP‐コレステロール」の略称でも呼ばれています。動脈硬化は白血球の一種のマクロファージが、活性酸素によって酸化したLDLコレステロールを貪食(内部に取り込んで処理)することから始まります。貪食して活動が停止した酸化LDLコレステロールは血管の内部に入り込み、動脈を硬く、狭くしていきます。これが動脈硬化の原因とされています。
LDLコレステロールは活性酸素によって酸化さえしなければマクロファージに貪食されることもなく、動脈硬化の原因にもならないということで、LDLコレステロールの数値よりも活性酸素の消去に気を使ったほうが血管の健康を守れるという話が、ずっとされてきました。
ところが、動脈硬化になった血管を詳しく調べてみると、LDLコレステロールの影響は30%ほどで、70%ほどはRLP‐コレステロールであることがわかり、RLP‐コレステロールは酸化していなくてもマクロファージに貪食されることもわかりました。RLP‐コレステロールは大きなコレステロールで、マクロファージはLDLコレステロールの4倍もRLP‐コレステロールを取り込むこともあって、血液中で増えるだけで動脈硬化のリスクが高まっていくということでテレビ向きの話題となったわけです。
LDLコレステロールとRLP‐コレステロールは合わせてnon‐HDLコレステロールと呼ばれています。ということは、LDLコレステロールとRLP‐コレステロールにHDLコレステロールを合わせたものが総コレステロールとなります。血液検査の結果を見ると、RLP‐コレステロールが記載されていないものもありますが、総コレステロール値からLDLコレステロール値とHDLコレステロール値を除いた分がRLP‐コレステロールの量となります。
RLP‐コレステロールは血液中で増えても肝臓に回ってきたときに回収されます。それなら心配はいらないのではないかと思われるかもしれませんが、肝機能が低下した人の場合には回収が遅れることから動脈硬化のリスクが高まります。また、糖尿病の人も回収が遅れることが知られています。
糖尿病の人は血管にブドウ糖が浸透することによって血管の老化が進みやすく、そのために動脈硬化のリスクが高まると言われてきました。糖尿病の人はRLP‐コレステロールの回収が遅くなって動脈硬化のリスクが高まることがわかってくると、本当の原因を追求していかなければならない気持ちが高まってきます。
国民健康・栄養調査によると、糖尿病患者は約1000万人、その予備群も1000万人いるとの推計がされています。比較対象は成人人口約1億人です。ここまで多くなると糖尿病患者と予備群が増えてくるとRLP‐コレステロールによる動脈硬化への不安が高まってくるのも当然のことです。
そういった関連性などの研究を進めていくためには、レムナントコレステロールという名称が知られ始めたことは、よいきっかけになるかもしれません。ちなみに、レムナント(remnant)とは「残り物」という意味です。