新型コロナウイルスの流行への不安心理から、マスクや消毒剤、トイレットペーパーなどの日用品に限らず、なんでこんなものまでと思われるようなものまで売り切れとなり、次の入荷がいつになるのかわからないという表示を店舗がしなければならない状況も起こっています。このことに対して、メディアではオイルショックのときのトイレットペーパーの買い占めを例にして話している専門家がいましたが、1973年の出来事を引き合いに出しても仕方がないという状況です。
当時はテレビとラジオ、あとは口コミしかなかった時代でしたが、今のようにSNSが全盛の時代とは比較するほうに無理があります。SNSといってもソーシャル・ネットワーク・サービスという本来の意味のインターネットや会員サービスの段階なら、それなりのブレーキをかける余地はサービス提供側にあったものの、手元にある通信手段で簡単に、誰でも、そして匿名で情報発信者になれる時代にはアクセルを踏みっぱなしという状態です。
これは日本に限らず、中国でスマホを示す「知能手机」が発信源となって随分とデマが広まったことがありましたが、統制社会では強烈なブレーキがかけられました。日本の状況をみると、新型コロナウイルスはパンデミック(感染爆発)ではないものの、情報の感染爆発であるインフォデミックは、WHO(世界保健機関)の発表の言葉を使うなら「ウイルスよりも速く拡散」しています。
消費不安に拍車をかけるようなデマ情報ならまだしも、詐欺に使うといった悪意のあるインフォデミックから、本当に不安と心配の心理から情報発信をしている悪意ではないものの結果として悪意になってしまうインフォデミックもあります。後者としては大型クルーズ船の乗客だった、濃厚接触で陽性反応が出たと名指しされて被害を受けた人もいました。名前だけでなく、ネット上の写真を見つけてきて広められた、自宅や会社の写真が出された、地図まで出されたということになると、他人事ではなくなります。私は他人に恨まれるようなことはしていないから大丈夫、だなどと言っていられる時代ではなくなっているということです。