感染拡大から考えるテイクアウトの感染不安

新型コロナウイルスの感染拡大で経済的に最も大きな影響を受けたのは飲食店でした。開店をしていても売り上げが90%減になった店も多く、難局を乗り切るためにテイクアウトやデリバリーを始める店も増えました。美味しい料理を、そのまま店の外でも食べてもらおうという気持ちを否定するものではないのですが、そのままの味ということと、持ち帰ってもらう、届けてもらうという形態では安全性への配慮が異なります。最も注意をしなければならないのは食中毒です。
食中毒が多い季節というと暑い真夏という印象が抱かれがちですが、食中毒が多く発生するのは9〜10月です。食中毒は食べ物や飲み物に付着した細菌やウイルスなどが人間にとって毒になる物質を発生させることによって起こる健康被害です。食中毒というと細菌をイメージするかもしれませんが、実際に原因となっているのはウイルス、細菌、自然毒、化学物質、寄生虫となっています。
自然毒や化学物質は時間が経過しても毒が増えるわけではないので、テイクアウトとデリバリーによって危険度が高まるわけではありません。それに対して、ウイルスや細菌は時間の経過によって増殖するので、その毒性物質も増えていきます。ウイルスも細菌も、人間に害をなすものは人間の体温に近い温度ほど活性化しやすい特徴があります。気温が高いといっても、そのために36℃まで食べ物の温度が高まることはないのですが、温かなものが時間をかけて冷えていくと、体温と同じような温度になることは当然のことです。そのために少しの量であったら害が出なかったはずのウイルスと細菌が多くの毒性物質を作り出してしまうことにもなるのです。
9〜10月に食中毒が多いのは、気温ということではなくて、夏場の暑さで体力が失われて免疫力が低下していること、気温の変化で体調を崩しやすくなっていることと同時に、行楽シーズンが始まって弁当や野外での食事の機会が増えることが関係しています。料理を外に持ち出すことが危険度を高めるということで、テイクアウトとデリバリーは食中毒の危険性が高いのです。
店内での食事はすぐに食べるということで衛生基準が低めになっています。キッチン内の安全基準だけでなく、塩分と糖分を増やすという食中毒対策もできていないのがほとんどです。だから、テイクアウトとデリバリーは調味料の量を変える、場合によってはコンビニなどの弁当などのように食品添加物を使うということも必要になってくるのですが、今の状態では「早く食べてください」としか言えないので、とても安全とは言えない状態ということです。