日本の医師は高齢化が進み、中でも地域のクリニックの医師は年齢が高くなっています。日本の医師免許は、アメリカとは違って一生モノで、免許証のように更新することなく継続できるので、高度医療が必要のない分野では、どうしても高齢化していく傾向があります。いつまでも続けられるとはいっても、いつかは引退を考えるものの、それは今ではないという思いで頑張っている医師も数多くいます。その「いつか」が新型コロナウイルスの感染拡大のために、目前に迫ってきている、すでに決断をしなければならないという状況にもなってきています。
クリニックの医師が高齢化しているといっても、現在の医療システムにとっては重要な存在です。新型コロナウイルスの感染拡大で注目されたことの一つに“かかりつけ医”があります。発熱があったときには地域の医師に相談して、新型コロナウイルスの感染が強く疑われる場合には対応ができる医療機関に送られるという制度で、かかりつけ医の紹介なしには大病院には行きにくくなっています。行きにくいというのは、通常の病気でも大病院は直接受け入れてくれないわけではないのですが、紹介状がない場合には保険外併用療養費として5000円が必要になります。
新型コロナウイルスへの対応で、海外の例が紹介されることが増えて、ドイツのホームドクター(ハウスアルツト)が知られるようになりました。ドイツでは全国民が地域のホームドクターを持たなければならない制度で、保険証はホームドクターに預けています。長年、診察を続けてきたホームドクターは病状だけでなく個人的な事情も把握していて、ホームドクターで対応できない場合には適切な病院を紹介してくれます。
一見すると日本のかかりつけ医と同じように見えてしまいますが、ホームドクターになるには大病院で幅広く知識を得た総合的な経験豊かな医師しかなることができません。大病院には、初めに全体像を把握するための総合診療科を設けているところがありますが、それと同じような機能がドイツでは地域にあるということです。