国家公務員の定年を現在の60歳から65歳に2022年から段階的に延長することが政府から提案されるという報道があり、こんな危機的な状況のときに検討すべきことか、という批判の声があがっています。民間の定年は65歳まで延長するように制度改革が行われているので、それに遅れての検討ということですが、22歳から60歳までの38年間の勤務が5年延びて43年間になると働く期間は約1.13倍になります。その分だけ支払われる金額が増えるのではなくて、年功序列の世の中では定年延長は1.3倍の給与総額にもなるとみられています。
日本老年学会と日本老年医学会は、高齢者の年齢を現在の65歳から75歳に引き上げることを提言しています。これは年金の受給時期を先送りするためではないかという穿った見方もされているのですが、高齢者は心身ともに若くなっているのは科学的にも証明されていることです。65歳から74歳は准高齢者として、支えられる側ではなくて、高齢者を支える側になることが求められています。
となると、国家公務員は60歳という“若い”段階で定年とするのではなくて、准高齢者となる65歳まで働いてもらおうということで、大きな世の中の流れとしては理解できないことではないことです。
高学歴で、優秀な成績で国家公務員になったのだから、そのキャリアを定年後も活かしてほしいということで、天下りにも、ある程度は理解がされています。その優秀な人材が65歳まで他に回ることがないという状況では、よいことなのかという議論もあります。新型コロナウイルスに対する霞が関の混乱ぶりを見ると、人材を役所に確保して、的確な対応ができるように定年延長もありかという議論もあります。
定年を延長しても、事務次官が代わると、その同期と先輩は出向か退職をして、事務次官が仕事をしやすい環境を作るという現在の状況を変えないことには、優秀な人材が省庁に残らない、万が一のときの対応が取れない可能性があるという不安は解消されないということです。