新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで友好関係を維持して、協力し合ってきた国々が、自国ファーストの立場から衝突をしています。その発端となったのは、世界的に不足しているマスクの争奪戦です。アメリカはマスクをして出歩くのは感染症の感染者のみだという常識だったのですが、あまりの感染拡大からマスクを着用するのが当たり前になって、急にマスク不足になってしまいました。アメリカが海外に輸出するのを禁止することを決めたのは、普通のマスクでも医療用のサージカルマスクでもなくて、N95という防護マスクです。
これをアメリカから輸入していたカナダは、大統領がメディアに登場して輸出禁止の発言をしたことに憤慨していましたが、医療崩壊を防ぐために防護マスク、防護服、ゴーグルを国内に回したいと考えるのは、どこも同じです。アメリカでは酸素吸入器が不足しているので、患者が少ない国内の地域から移動させる、海外からも輸入して不足することがないようにする、と言っているのに、自国のマスクは外には出さないということでは、自国ファーストと揶揄されても仕方がないことです。
中国では、マスクを大量増産する必要があるからといって、日本から不織布を100トン単位で輸入しようとしていました。不織布のマスクは中国が世界の大製造国で、日本でも国内消費の80%は中国製となっています。それなのに不織布を必要としたのは、マスクではなくて、他に使用するためだということがわかりました。それは新型コロナウイルス感染で死亡した人を包んで、感染が広がらないようにするための遺体収納袋です。感染症による死亡では、棺桶が使われず、葬式もなしに火葬場に運ばれています。
医療崩壊につながるほどの感染拡大を前にして、どこの国もマスク使用以外に不織布が必要になる時期が迫っている中、そんなものの取り合い、奪い合いで国際的な揉め事が起こるようなことは避けてもらいたいと願わずにはいられません。

