感染拡大から考える地政学上の日本の位置

新型コロナウイルスの感染拡大から倒産する会社が増え、これを買い取ろうという動きが海外の企業から起こっています。これまでは不動産や観光などの業界が買い取りの対象となっていましたが、製造関係の会社、その中でも食品加工の会社が注目されるようになっています。
日本の位置は、通常の地図で見ていると大陸に接近して島のようにしか見えないこともあるのですが、地図を逆転して大陸側から見てみると、日本は太平洋に出ようとする中国、ロシア、韓国、北朝鮮を塞ぐように位置しています。北は北方領土の択捉島まで、西は台湾の近くの与那国島までと、その距離は3000kmほどもあります。
新型コロナウイルスの感染拡大によって食糧難が指摘されたときに、日本は海に魚を採りにいけばよいのだから安心という声もありました。中国には東シナ海があるといっても、日本の海域が案外と広いために、ここだけの漁獲量だけでは14億人を食べさせることはできません。南ルートで、太平洋に出て、日本の領海外で日本に行く前の魚を獲っても、まだまだ足りている状態ではありません。北方領土の魚をロシアから買い取っても、これでも不足をカバーできません。
そこで心配をする人の中には、新型コロナウイルスの感染拡大のために経営困難となった漁業関係、漁業関連の加工食品の会社を買い取って、それを中国に送り込むのではないか、と考えてしまう人も少なくありません。自由に取り放題ということではないのですが、家畜や農産物に比べれば、膨大な数が見込める太平洋に面している日本の海は大きな魅力があるように見えています。
これまで漁業研修生としてアジアの各国から安い働き手を集めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって帰国者が多く、新たに研修に来る人も減り、漁獲量、加工量を増やそうにも人手不足で厳しい状態になっています。そこにアジアインフラ投資銀行の資金で中国企業が進出して、労働者も送り込んで、その成果を中国に送るという日本が食料確保の最前線になることも心配されるようになってきています。