新型コロナウイルスの感染拡大の抑制に効果があるということで、日本で開発されたアビガンが注目されています。もともとは抗インフルエンザウイルス薬ですが、これが国内に70万人分が備蓄されています。70万人分というのは、1人の治療に120錠が必要として70万人分ということです。アビガンの備蓄を200万人分に増やすというのでよかったという報道がされていますが、それを喜んでいてよいのかという議論もあります。
アビガンは、効果があるとしても、すぐに使うことはできません。大量に備蓄されているのだから、医薬品としての承認を受けていて、すぐに使用できるものと思っている人もいましたが、まだ承認はされていません。医薬品の承認は動物試験、少人数での健康な人での試験、多くの人を対象とした健康な人での試験、少人数の患者での試験、多人数での患者試験を経て、やっと医薬品としての承認を得ることができます。アビガンは新型コロナウイルスについては企業内試験という健康な人に対する試験が始まっている段階です。
アビガンは新型コロナウイルス治療薬ではなくて、あくまで抗インフルエンザウイルス薬ですが、患者が希望すれば使用できるという緊急措置としての対応がなされています。
海外では新型コロナウイルスへの改善例も報告されています。医薬品には副作用があり、そのクリアが医薬品としての承認の大きなハードルとなっているわけですが、アビガンには催奇形性があって、妊婦や妊娠の可能性がある女性には使えないものです。催奇形性は妊娠中の女性が使うことで胎児に奇形が起こる危険性のことです。
なぜ承認されていなくて、すぐに使うことができない医薬品が大量に備蓄されていたのか、という疑問については、これしか効果がある医薬品がないので将来の承認を見据えて用意をしていたのではないか、との考えもあるのですが、実際にところは、まだ明らかにはされていません。