救急車によって救急搬送される人は1年間に596万人以上もいます。このうち急病は約65%で、入院治療が必要な人の原因は心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血)が多くなっています。急を要する状態で運び込まれるもので、到着が遅れたら死亡率が一気に高まることになります。そのために、救命救急センターに到着したら、すぐに救命のための治療が行われます。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、感染の疑いがある患者が病院に来たときには検査が実施されることにはなっていても、救命措置が必要な患者に対しては検査をして、感染の疑いがないことを確認してからの治療というわけにはいきません。ましてや、感染していても無症状の患者が緊急搬送されたときには、ほとんどが疑いなしに受け入れて、目の前の状態に合わせた治療を実施するのは仕方がないというか、当然のことといえます。
しかし、東京の有名な大学病院が感染症以外の患者に実施した新型コロナウイルス検査で、約6%が感染した陽性であったことがわかり、これが市中感染の確率を示すのではないかとみられています。病院に来る患者の6%が陽性であるとしたら、救命救急センターの受け入れ態勢は以前と同じというわけにはいかなくなります。
新型コロナウイルスの院内感染が発生した病院では、救急搬送されてきた人に対しては、よほどの対策をしないといけないことになります。その苦労は想像を絶するようなことになっていると思っていたら、救命救急センターを閉鎖してしまった大病院がありました。院内感染への対応だけでも困難な状態であることはわからないではないのですが、一刻の遅れが命を失うことにもなりかねない心疾患と脳血管疾患で救急車を呼ばなければならない人にとっては、救われる道が絶たれることにもなります。
今は、余計な議論をしている余裕がないことは承知していますが、少し収束してきた段階では、救命救急センターを閉鎖しないで済むように改めて院内感染を起こさないようにする対策に着手すべきではないか、ということを伝えさせてもらっています。