感染拡大から考える独居老人率

新型コロナウイルスの感染率には国による違いがあります。それはウイルスの強さに関係があるのか、それとも国の感染防止対策の成果なのか、議論があるところですが、イタリアで感染が急拡大したのは都市の形態と家族関係が影響しているようです。ヨーロッパの都市が城郭都市から発展したもので、行政や仕事場、商業地が城郭都市内にあり、そこで働く人の多くは城郭都市の外側に住んでいます。そのために、祖父母、親、孫の3世代で暮らす家族が非常に多くなっています。
若い人は感染をしていても症状が現れず、その状態で濃厚接触者に感染させるというところが恐ろしい感染症であることから、都市部で感染した若者が家庭に持ち帰って、高齢者が感染するという急拡散をする条件が揃っているのがイタリアに限らず、城郭都市から発展したヨーロッパの特徴となっています。
イタリアの高齢化率は2018年データでは23.3%で日本に次ぐ第2位となっています。日本は28.1%と相当の高齢化率ですが、まだ新型コロナウイルスの感染者が多くはないのは日本の高齢者の生活形態が影響しています。日本の高齢者(65歳以上)の独居率は2020年推計で男性が15.5%、女性が22.4%となっていて、これも世界一の割合です。
外で遊んだ若者が感染して家庭内で高齢者に感染させないように繁華街に出ないことを言われたときに、「うちには高齢者がいない」ということを遊びに出る理由としていた声もありました。そう言わせるほど、身近なところに高齢者がいない世界は都市部には多くなっています。
独居の高齢者は外出を自粛すれば若者から感染するリスクは低くなるといっても、デイサービスなどのサービス提供者から感染するリスクは当然のようにあります。今は感染が強く疑われる人しか検査が受けられない状態ですが、高齢者の感染を本気で防止するなら、医療や福祉で多くの人と接触する人は是非とも検査を受けて、安全の証明をもって仕事に当たってほしいということです。