新型コロナウイルスの感染拡大によって、感染しやすい人と重症化しやすい人が知られるようになってきました。初めのうちは海外と同様に高齢者の感染者が多かったことから、海外のデータで明らかになってきた喫煙者と糖尿病患者のリスクの高さが言われていました。今では年齢層に関係なく感染が拡大していることから、リスクの見直しがされていますが、それでも糖尿病患者のリスクは高いままです。
糖尿病患者は免疫が低いことについては以前から言われ続けてきていました。その理由の一つが免疫細胞の好中球の活動が低下することです。免疫細胞は外敵を攻撃する兵隊のようなもので、白血球とリンパ球があり、好中球は白血球の一つです。非常に数が多くて、物量作戦のように数で勝負する白血球です。免疫の第一防御ラインが好中球で、これで対応できないときには大きな白血球のマクロファージが登場して大量に取り込み、外敵を破壊していきます。
好中球の活動が低下することは第一防御ラインが破られることになるので、確かに免疫が低下して、ウイルスの活動が抑えきれないことなるものの、それに続く防御ラインが正常に働いていればウイルスは抑え込めるはずです。それができていないということは、好中球以外の免疫の低下があって、新型コロナウイルスが抑制できないことが考えられます。
マクロファージで対応できないときには、次にリンパ球が登場します。リンパ球には、抗体を作り出すB細胞と、直接攻撃するT細胞があります。抗体は銃弾のようなもので、T細胞はミサイルにたとえられます。免疫細胞は、どれも血液中を流れてパトロールしていて、異常があったところに素早く駆けつけることによって対応しています。それが遅れると免疫力も低下することになります。
糖尿病は血液中にブドウ糖が増えすぎて、そのブドウ糖が尿に混じって排出されるものと一般には認識されているようですが、それがブドウ糖の流れを見ているだけのことで、血液中のブドウ糖が多くなったときには血管の細胞にブドウ糖が取り込まれて糖アルコールに変化します。細胞は一定の水分量が保持されている状態で新陳代謝が行われますが、糖アルコールが触れると全体的に水分量が増えて、新陳代謝が低下します。そのために血管の細胞の再生が間に合わなくなって、徐々に血管が傷んでいきます。これが続くことによって血管が硬くなり、弾力性が低下して、血流が大きく低下するようになります。
こういった状態では血液中をパトロールしている免疫細胞の到着が遅れるようになります。これは動脈の場合で、毛細血管では細胞の老化よりも直接的な変化が起こっています。毛細血管は直径が8μmで、ここを通過する赤血球は10μmの大きさがあります。赤血球はつぶれるようにして1個ずつ通過していきます。ところが、血液中のブドウ糖が多くなりすぎると赤血球がくっついてしまい、通過できない赤血球も現れます。そのために毛細血管から先に酸素が運ばれなくなって、全身の細胞に影響が出ると同時に、免疫細胞も毛細血管を通過するのに時間がかかるようになって、免疫が低下することになるのです。