感染拡大から考える被害者と加害者の逆転

新型コロナウイルスの感染については、発生した中国からの旅行客が危ない存在と認識されて、その方々が感染の加害者で、日本人は被害者というのが、これまでの比較的共通した認識でした。なんだか中国人にだけ広がっているような感染症のような印象が抱かれがちでしたが、日本人は一方的な被害者ではなくて、日本人も感染源になりかねないということです。
感染して、すぐに発熱、咳といった症状が出てくれればわかりやすくて、他の感染症にみられるように症状が出てからしか感染しないというなら、まだ避けようもあります。しかし、潜伏期間中でも症状が現れなくて、本人も気づかないうちに感染させてしまう加害者になることも当然のように考えられます。
他人から感染することを想定していたときには、テレビ報道でも「マスクは自分から感染させないためのもので、マスクをしても仕方がない」などと発言しているコメンテイターもいました。それは自分が被害者という発想があったからで、症状がないままに加害者になる可能性を考えたら、マスクは不要だということは言えないはずです。被害者にならないようにマスクをするのではなく、加害者にならないためのマスクという考えです。といっても買い占めからマスクが手に入らなくなっている現状では言いにくいことではあるのですが。
WHO(世界保健機関)は今のところパンデミック(世界的な拡大)ではなく、エピデミック(特定の地域で流行)であるという発表をしています。しかし、日本は新型コロナウイルスの感染者数が中国に次ぐ2位になった現状を考えると、エピデミックだと言っていられるのかという思いが浮かんでくる人も少なくないはずです。すでに日本人が感染していて、知らないうちに感染させていることは、すでに起こっているとみられています。
クルーズ船の観戦場所としてレストラン、娯楽室、劇場、カジノなどが報道されていました。これから日本もIR(統合型リゾート)の時代になると、大量の人が交錯する機会が格段に増えるので、これを心配する人もいますが、テレビ報道でも紹介されていたレストランや映画館のほかに、コンサート会場、スポーツ会場のように多くの人が集まる場所は今でもリスクが高いということを頭に入れて、対策を考えるべきだということです。