新型コロナウイルスの対策として、酸素を多く供給しようという動きがあります。新型コロナウイルスは肺炎を起こし、肺から取り込まれる酸素の量が減り、全身の酸素供給量が低下するため、酸素を摂って何とかしようという考えは理解できないことではありません。しかし、これは感染した後の話であって、感染予防ということでは少し違うかもしれません。
酸素の供給量を低下させるものというと一番にあげられるのは喫煙です。タバコを吸うと肺にダメージを与え、肺から赤血球に与えられる酸素量が低下します。赤血球は酸素を運搬するのが主な役割ですが、酸素を充分に渡すことができないのでは、全身の細胞を正常に働かせることができなくなり、治療をしても効果が出にくいということにもなります。
喫煙をして酸素供給量が低下すると、酸素を多く運ぶために赤血球が増えます。赤血球が増えすぎると狭い毛細血管を通過するのに混雑状態となって、このことが全身の酸素不足を引き起こすことになります。血液ドロドロというと、一般には脂肪の摂りすぎで血流が悪くなることを指していますが、ドロドロ状態になって血流が低下するのは喫煙をしている人のほうなのです。
毛細血管を赤血球が通過しにくくなるのは、糖尿病によって血液中のブドウ糖が多くなりすぎた状態でも起こります。濃くなったブドウ糖は赤血球をくっつけてしまうので、どうしても通過しにくくなり、酸素の供給も遅れるようになります。もっと影響があるのは、糖尿病のヘモグロビンA1cの増加です。ヘモグロビンは赤血球の酸素を吸着して運ぶ血色素で、ヘモグロビンにブドウ糖が結合してヘモグロビンA1cになると酸素を吸着することはできても、その酸素を離すことができなくなります。つまり、酸素を送り届ける能力がないヘモグロビンとなるので、全身の酸素供給量が低下してしまうことになるのです。
酸素を効率的に運ぶためには、脂肪の摂りすぎ、糖質の摂りすぎを抑えた、いわゆる健康的な食生活をすることが大切だということです。