新型コロナウイルスの感染が、都市部だけでなく、高齢者が多い地方においても、だんだんと身近なこととなり、外出自粛が健康に影響するようになってきました。高齢者は歩く機会が減るだけでも筋肉の減少が大きくなります。高齢者は1週間も寝たきりになっていると筋肉量が5%も減って、筋力は10〜15%も低下するといわれています。3〜5週間も寝たきりだと筋肉量は10〜20%も減り、そして筋力は50%も低下するといわれています。
寝たきりというと、脳梗塞によって動けなくなることや転倒して骨折することを想定して対策が練られていますが、外出ができないために、あまり歩かない状態が長く続くと、これは寝たきりと同じような状態になってしまいます。足腰の筋力を低下させないためには、立ち上がること、足腰の筋肉運動をすることが大切になります。こういった筋肉運動では筋力をつけることはできても、持久力と筋代謝力をつけることはできません。
筋力は筋肉の強い力を発揮できる能力のことで、これは筋肉に負荷をかければ高めることができます。持久力は筋肉の力を長く発揮する能力で、これは弱めの負荷であっても長く刺激を続けることで高めることができます。そして、筋代謝力は、筋肉を動かすことによって筋繊維(筋肉細胞)がブドウ糖や脂肪酸を取り込んでエネルギー化する能力で、多くのエネルギーを作り出すことを指しています。この3つの筋肉の能力を高めるための、最も簡単な方法は歩くことです。それも歩幅を広げて、勢いよく歩くことです。
といっても、高齢者で、運動不足によって筋肉が減った状態では、筋肉の能力を高めるような理想的な歩行をするのは難しいことです。しかし、それを可能にする歩行法があります。それは2本のポールを使って歩くノルディックウォーキングです。ノルディックウォーキングには、北欧が発祥のスポーツ感覚でグイグイと歩くアクティブスタイルと、ポールを支えとして安全に歩く日本で生まれたディフェンシブスタイルがあります。運動不足の高齢者にすすめているのはディフェンシブスタイルのほうで、これに慣れてきた人、物足りない人にアクティブスタイルをすすめています。
2本のポールは歩くときだけでなく、室内でも筋肉強化のストレッチに使うことができます。このポールストレッチを外出自粛の中で続けてきた人は、何日かぶりに外出したときにも普段どおりの元気な歩行ができていることを実際に目にしています。