感染者の封じ込めは地域対策だけで大丈夫なのか

新型コロナウイルス肺炎が世界的に脅威を振るっています。コロナウイルスは、発熱や上気道症状を引き起こすウイルスで、人に感染を起こすものは過去には6種類が確認されています。コロナウイルスの大流行として知られているのは2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)です。新型コロナウイルスは、その変異種であると考えられ、重症化傾向のあるウイルスともなっています。中国科学院武漢病毒研究所は新型コロナウイルスの遺伝子構造の96%がコウモリのコロナウイルスと一致していることから、コウモリから野生動物を介して人に感染したことを明らかにしています。
WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルス肺炎が人から人へと感染していることを発表しています。その症状は、鼻水や頭痛、咳、発熱など軽度な場合が多く、他のウイルス感染と同様の症状となっていますが、肺炎や気管支炎など重度の気道疾患につながっています。その潜伏期間は14日間程度と推測されています。初期段階では他のウイルス感染と変わらないため、専門医で検査をしないと判別することができません。そのために感染に気づかずに他の人に飛沫や接触によって感染させることがあり、自覚症状なしに感染を大規模に拡大させるスーパー・スプレッダーが出現する可能性も高まっています。
新型コロナウイルスに対する有効なワクチン(抗ウイルス薬)は開発されていないため、発熱や呼吸器の炎症による咳や呼吸困難を抑える対症療法しかありません。その対象療法も、新型コロナウイルスは変異の可能性が高いことからワクチン開発は難しく、治療、隔離、予防といった社会的封じ込めしか方法がないのが現状です。
感染者を施設内に封じ込める、一定の地域に封じ込めるという対策が取られるわけですが、新型コロナウイルスに限らず、強力なウイルスは死滅することなく、体内に棲み着いていて、免疫によって押さえ込まれているだけです。いわば体内に封じ込めているだけで、免疫が低下したときにはウイルスが増殖して、発症することにもなります。封じ込めたウイルスが再び出るか出ないかは免疫力の強さが大きく関係しているわけで、新型コロナウイルスでも高齢者や基礎疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)のある人はウイルスが感染しやすく、また感染した場合の危険度が高まることが発表されています。
年齢を重ねるほど、体内の封じ込めの防御ラインが破られるリスクが高くなります。また、基礎疾患があると、さらにリクスが高まるので、生活習慣病がある人や、その予備群の人は、それを治すように、悪化しないようにすることが体内の封じ込めを続けられるということです。