酸素には、触れた物質を酸化させる作用があります。例えば、鉄が酸化するとサビが生じて、だんだんとボロボロの状態になっていきますが、それと同じように酸素が多く発生すると人間も細胞がサビついたようになり、細胞の機能が低下していくようになります。
酸素の摂取量が一定の量のときには酸化は進みにくいものの、呼吸によって取り込まれる酸素が多くなりすぎて、濃い状態になると酸化が進みやすくなります。未熟児を保育するために使われる新生児保育器は高濃度の酸素が使われていますが、酸素濃度が高くなりすぎると乳幼児の眼の酸化が進み、網膜症が起こることが知られています。
もう一つ例としてあげられるのは天ぷら油の酸化です。天ぷらに使われるのは植物油ですが、植物油や魚類の脂肪は不飽和脂肪酸に分類されます。これに対して動物の脂肪は飽和脂肪酸と呼ばれています。脂肪酸は脂肪を構成する成分で、炭素と水素が結びついて1本の鎖状になった片隅にカルボキシル基が結合した構造をしています。
一般的に脂肪と呼ばれる中性脂肪は脂肪酸が3個と、グリセリド1個が結びついたもので、化学名としてはトリグリセリドと呼ばれています。飽和状態になっていると、それ以上は酸素が結びつくことができないために酸化しにくくなっています。
この不飽和脂肪酸に酸素が結びつくのが酸化で、酸化して脂肪が過酸化脂質に変化すると活性酸素を発生させて、周囲の脂肪を過酸化脂質に変化させていきます。天ぷら油は時間が経過すると色が黒くなり、粘度が高まっていきますが、これは酸化が進んだ証拠といえます。
植物油や魚の油は健康に良いとされるものの、不飽和脂肪酸であるために酸化しやすい性質があり、酸化したものを摂ったのでは、まるで活性酸素を摂っているのと同じことになる、と言われています。
そのために、不飽和脂肪酸を摂る場合には、酸化を防ぐ働きがある抗酸化成分が含まれている食品を一緒に摂ることが一般にすすめられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕