社会課題を解決するには、制度上の問題の改善から実際の支援に至るまで、取り組むべき点が多く存在しています。そのため、子どもの課題、高齢者の課題といったように、社会的弱者の分類ごとに取り組まれてきたところがあります。
すべてを一度に解決することは、これに取り組む方々の時間や労力の限界などもあって、別々に取り組まれることがありました。しかし、社会課題は分断されたものではなく、連続していて、一定のところで終わり、一つのことを解決したら完成ということではないはずです。
社会課題として、少子高齢化、地方の過疎化、生産性の低迷、子どもの貧困、環境問題、情報リテラシーの格差など、本来は全体的視点で語られなければならない重要事項が、個別の細部に注目した視点から抜けきれず、大きな流れの中での解決が遅れるような現状がありました。
働く人を取り巻く時代や環境の変化は、職場だけでなく家庭にも影響を与え、子どもから高齢者までを含んだ家族にも影響を与え続けていきます。その一方で、時代や環境の変化は、社会課題を解決する転換点にもなり得ます。
これまで社会課題の対象として私たちが掲げることが多かった発達障害は、すべての子どもの10人に1人が該当するほど急増しています。発達障害児の支援は直接的には子ども本人に対して行われますが、家庭で過ごす時間での対応が重要であり、子どもと最も長く触れ合う保護者の対応が改善や能力の発揮に大きな影響を与えています。
保護者が対応するための知識や情報の提供、保護者への支援が子どもの支援の重要な要素であるにも関わらず、これまで充分なサポートがされてきたとは言いにくい実情があります。
発達障害児の保護者は働く人と重なり合った世代です。家庭での対応の困難さや悩みは仕事にも少なからず影響を与えます。
また、発達障害は今でこそ10人に1人が該当することがわかり、支援も受けられるようになっていますが、今から20年前には100人に1人ほどしか確認されていませんでした。35年前には医療関係者の中でも少数にしか認識されていない状態でした。
現在の働く世代は、発達障害と判定されず、支援もないまま過ごしてきた人が多く存在しています。発達障害は生涯にわたって特性が続くことから、労働人口が大減少する時代には、その特性がある人が安心して働くことができる環境が必要です。そのための理解を進めることも重要な課題となります。
社会課題の解決には全世代の理解と支援が必要であり、その共通認識を深めることも役割だと強く認識しています。
〔特定非営利活動法人日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕