文部省の学習指導要領の改訂によって、2022年4月から金融教育が義務化されました。そして、小学校、中学校、高校を通じて学校で金(かね)との付き合い方についての教育が実施されています。
その目的として、自立、社会との関わり、将来への意欲が掲げられていて、同時期に実施された成人年齢が18歳に引き下げられたことが影響しています。成人になったことによる金融トラブルへの懸念が、まずはあげられます。
少子化で年金だけでは暮らせない時代となり、資産形成の必要性が高まると同時に、金融商品などを使った騙し(だまし)の横行への対策も重視されています。
高校で資産運用の教育も行われ、この講師として金融の専門家が学校現場に出向き、まだ充分な知識と対応力が育っていない子どもたちに稼ぎ方、設け方を教えることに違和感を感じるのは少数ではありません。
また、稼ぐためには、他の人たちと、どのように付き合っていくかということを教えているようなもので、これでは「騙されないように」ではなくて、まるで騙し方を教えているようなものだという指摘もあります。
「支援する人を支援する」のテーマの中で、このようなことを書くのは、発達障害の特性がある子どもたちの発育への懸念があるからです。発達障害の特性があると非常に騙されやすいことは、すでに認識されていることです。
紙(もしくはタブレット)の中での学習が実社会では役に立ちにくいことは以前から言われてきたことで、それを実際の社会と同じ方法で学んでいくことは重要であることを認めながらも懸念が広がっています。
実社会で使う計算の最も身近なことは売買での金銭の受授で、現物の貨幣でなくてもよいので、お金(お金もどき)を使って、商品の流れを勉強することはあってよいことです。多くのものを買うためには多くの貨幣が必要で、それを稼ぐために働く(工夫や努力をする)というのが本来の姿です。
それなのに金融知識を身につけることによって、他の人を出し抜くことを教えるようでは本来の目的とは違っています。社会の流れを金銭の流れを用いて理解するところから逸脱していないか、そこを常に考えておくべきです。
発達障害の特性がある子どもは、今でも学習障害(中でも算数障害)で困難さを抱えているところに、それを助長するようなことはあってはならないことですが、それに近づいているように見えて仕方がありません。
だからこそ、学校教育での金融教育について、教師を支援する専門家による「支援する人を支援する」だけでなくて、その専門家に対して教育の基本中の基本の精神を伝える「さらに支援する人を支援する」立場が必要ではないか、との考えを示させてもらっています。
〔特定非営利活動法人日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕