新型コロナウイルス感染症と肥満の深い関係

新型コロナウイルスは高齢者、基礎疾患のある人は感染しやすく、また重症化しやすいことが確認されています。基礎疾患は糖尿病、高血圧、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、心疾患、脳血管疾患、肥満のほか肺疾患、腎臓疾患なども含められています。基礎疾患の中に肥満が入っていますが、肥満そのものは病気ではなくて、肥満によって引き起こされる糖尿病、高血圧症、心疾患、脳血管疾患が問題だと考えられています。
しかし、肥満といっても肥満症とされる範囲になると、これは治療の段階で、重症化リスクも高まります。肥満の判定はBMI(Body Mass Index=体格指数)が使われています。BMIが25を越えると肥満と判断されるものの、これだけでは肥満症ではありません。肥満症は肥満に関連する健康障害を合併していて、医学的に減量が必要となる状態を指しています。
では、肥満症でなければ問題がないのかというと、その考えは新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく変わってきました。アメリカの研究では、新型コロナウイルスに感染した人をBMIが25以上の人と25未満の人に分けて調査したところ、重症化リスクは25以上の人は1.8倍にもなっていて、入院リスクは2倍以上、死亡リスクは1.5倍以上に上昇する可能性があるということがわかっています。さらに肥満によって感染率も高くなり、ワクチン接種の効果も下げるという報告もされています。新型コロナウイルスの感染拡大時代には、単なる肥満と簡単に考えるわけにはいかないということです。
イギリスの研究では、BMIが35〜40の肥満度3の人は、そうでない人に比べて死亡リスクが40%も増加すると報告されています。BMIが40を超えた場合には死亡リスクは90%も増加して、死の危険性が2倍近くにもなるということです。
新型コロナウイルス感染症では炎症性サイトカインの分泌量が増えて、ストレスによるインスリン拮抗ホルモンの分泌も増加します。その結果として血糖値を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性となり、糖尿病のリスクが高まります。肥満になると糖尿病になりやすくなり、そのことが重症化リスクを高めることになるということです。