日々修行133 発達障害の自業苦を業苦楽に導く

発達障害の特性がある子どもにとって、最も苦しく、受け入れにくいのは「根拠のない励まし」であるということを前回(日々修行132)書かせてもらいました。

発達障害の特性は、現在の通常の教育環境では学ぶことに大きな困難さがあり、それを克服しようとしているチャレンジャーのような捉え方もあります。そこで応援や励ましをしようと考える気持ちはわからないではありません。

また、子どもが持って生まれた才能に期待するのは、親であれば“普通に”抱いている感覚で、“普通と比べて”少し劣っているところがあれば、それを上回る才能があることを期待しがちです。

発達障害の中には“ギフテッド”と呼ばれる優れた才能の持ち主が存在しているのは事実です。しかし、その確率は(調査によって差はあるものの)10%くらいだとされています。

すべての子どものうち発達障害児が10%とされ、その10%であるので、全体では1%、発達障害に限っても10人に1人いるかという状況です。

自分の家族の子どもにギフテッドの才能があったとしても、それを発揮させることができるか、環境を整えてあげることができるのかは保護者の考えと接し方にかかっています。

期待して、応援することは大事なことであっても、それが過剰になったり、子どもに苦労をさせるようなことを期待することは、できることなら避けてもらいたいことです。

今回のお題の“自業苦”と“業苦楽”については、先にも説明をさせてもらっています。

私が生まれ育った寺院の宗派の浄土真宗には地獄はなくて、亡くなったら信者は極楽に行くことができます。

浄土真宗の開祖の親鸞聖人は、自らがやってきた自業によって苦しむことが“自業苦”(じごく)としています。子どもの場合には保護者がやってきたこと、今やっていることも自業です。

保護者の過剰な期待だけでなく、発達障害の特性を充分に理解することなく、これまでの自分の常識から対応をすることも、それがマッチしない子どもにとっては“自業苦”と考えられています。

そのような反省をもって、自業による苦を楽な状態、つまり的確な対応によって楽な状態にしていくことは、親鸞聖人の言葉を借りると“業苦楽”(ごくらく)となります。

この考えを保護者や発達障害児を支援する方々に押しつけるのではなく、気づいてもらえるような環境づくりをすること、そのために学ぶ機会を設けていくこと、これが私たちの目標であり、今年の初めから心に刻んでいることです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕