日々修行161 ワインの師匠との出会い

ワインを勉強することは夢のまた夢と思っていたときのこと、そんなことを思うとチャンスが向こうから飛び込んでくることもあって、桑山為男先生にインタビューする機会があり、さらにジャパンワインソサエティ(Japan Wine Society)に入会させてもらい、嫌でも勉強させられることになりました。

桑山為男先生といえばワインの世界では知らない人がいない重鎮中の重鎮で、私が巡り合ったときはホテルオークラ(東京・虎ノ門)のメインレストラン「ラ・ベル・エポック」のチーフソムリエ(後のシェフソムリエ)でした。

初めて名刺交換させてもらったとき驚いたのは通常より幅広の名刺で、そこには数々のワインに関する役職や資格名が列記されていました。フランスの各地のワインの協会によるワイン騎士などに続いて、ベネンシアドールとありました。

これはシャリー酒(スペイン・アンダルシ地方の白ワイン)を樽からグラスに注ぐプロの資格で、当時は日本人では1人だけ、というよりもスペイン人以外では世界で唯一の存在でした。

この話をすると長くなるので、別の機会に書くことにしますが、ただ長い柄杓を使って注ぐだけではなくて、空気を含ませて注ぐために大きく弧を描いて、宙に飛ばしてグラスに的確に注ぐというベネンシアドールでも数少ない技術の持ち主でした。

ジャパンワインソサエティは桑山先生がホテルオークラ内に設立したグループで、当時はワインに直接関わっていないメンバーは私だけでした。ワインの魅力を伝えることが役割ということで、さまざまなメディアに取り上げられるように動きました。

これが後に酒のペンクラブ(日々修行156で紹介)にもつながり、ソサエティのメンバーからは後ろ指を指されるようなこともありましたが、桑山先生は「ワインだけでも多くの分類があるのだから、多くの種類の酒を知ることはワインの普及にも役立つ」と言ってもらいました。

その当時は貴腐ワインが日本(山梨)でも製造されるようになったばかり(50年ほど前)の頃で、白ワイン用のブドウの果皮が特殊なカビに感染することによって皮が薄くなり、糖度が高まり、特有の芳香が出るという超高級ワインでした。

とても手が出るようなものではなかったのですが、貴腐ワインの製造所に取材と称して一緒に行かせてもらい、持ち帰ったものを料理と合わせて、メニューを考えるという機会にも参加させてもらいました。

他の国内のワインの醸造所にも一緒に訪問させてもらい、国際ワインコンクールで金賞を世界で一番多く受賞したルミエールにも行かせてもらいました。

そのワインショップが、私が月刊健康情報誌を13年間担当していた社団法人の近く(東京・永田町)にあったので、仕事に行ったのかワインの買い付けに行ったのかと言われるほど買い占めていました。

最後に桑山先生から言われたのは、「ソムリエの真似は人前でしないように」ということでした。ソムリエはワインの味を確認するために、口に少し含んでドゥルルッと啜るように鳴らすことがあります。これは急激に空気に触れさせて香りを立たせるための手法です。

これはソムリエだけに許されることですが、レストランのホストテイスティングのときにドゥルルッと鳴らす人は今でも年に何回か目にしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕