飲酒の弊害というと飲みすぎによって肝臓を傷めること、糖尿病や高血圧症の誘因となることは知られていますが、飲みすぎなければ健康面で問題はないと考える人は少なくありません。
しかし、そのようなことを信じていると、「飲む量を減らしたのに、なんで身体を傷めてしまったのか」と悩むことにもなりかねません。
そのようなことを信じている人の中には、飲酒の指導をしている医師もいます。患者に指導するくらいなので、自分でも実践していることも多く、その結果、「医者の酒の不養生」と言われることにもなっています。
よく言われるのが「ほろ酔いの適量」で、そのレベルの飲酒であれば、毎日とは言わないまでも週に2回ほどの“休肝日”を設ければ、生活習慣病の心配はいらないだけでなく、「むしろ飲まない人よりも健康」とも言われています。
このことは厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日発表)でも示されています。
飲酒の弊害は、アルコールの影響だけではありません。ほろ酔いの適量の飲酒を守っていても、その後のシメの食事が問題で、飲酒をすると肝臓での脂肪合成が進みます。
肝臓には余分なエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を脂肪酸に合成する働きがあって、合成された脂肪酸が結合して中性脂肪になります。中性脂肪は脂肪酸が3つ結合した形をしています。
この中性脂肪は肝臓に蓄積されるか、血液中に放出されるかして、血液中で余分となった中性脂肪は最終的に脂肪細胞に蓄積されることになります。
脂肪に合成されるのは、エネルギー量が高いからで、脂肪は1gが約9kcalと、糖質とたんぱく質の約4kcalと比べて2倍以上になっているからです、脂肪に変化させることで、同じ容量で多くのエネルギー量を蓄積させるための仕組みということです。
飲酒をすると肝臓からブドウ糖が放出されにくくなり、そのために血糖値が一時的に低下するということを前々回(日々修行174)紹介しました。
そのために空腹を感じるようになって、不足した糖質(ご飯や麺類など)だけでなく、脂肪が多い料理(肉や魚など)も多く食べるようになります。
糖質に含まれるブドウ糖が多くなると糖尿病になると思われがちで、糖質を制限すれば予防・改善できるとも思われているところがあります。
しかし、糖尿病は全体的なエネルギー源の摂取過剰が大きな原因であり、糖尿病の予防・改善のためには全体的なエネルギー摂取を抑えることが重要になります。
そのことがわかっていれば、飲酒量だけでなく、飲むときに食べるもの、食べる量を考えることになるのですが、そこまでの指導は、なかなかされていないのが実際のところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕