日々修行181 吟醸酒のレベルアップ

吟醸酒と大吟醸酒は、どちらが優れているか、ということが話題となったときに、「吟醸酒が好き」というと、「それは安いからだろう」と言われることがあります。販売価格は大吟醸酒のほうが高いのは事実で、それは酒米(酒造好適米)の使用部分の量の違いが関係しています。

吟醸酒も大吟醸酒も、精米歩合の値が小さい(米を多く削っている)もので、精米歩合が70%以下は本醸造酒、60%以下は吟醸酒、50%以下は大吟醸酒と分類されています。

同じ酒米が使われていても、いわゆる雑味の原因となるタンパク質や脂質などが米の外側のほうが多くなっていることから、外側から多く削っていくほど透明感がある、すっきりとした味わいになっていきます。

酒造に使われる部分が少ないということは、それだけ同じ原材料(精米後の米)が少なくなるので、どうしても価格が高めになります。

この常識は、従来の精米法であった場合のことで、精米法の技術革新によって、吟醸酒の精米歩合であっても大吟醸酒と同じレベルにすることができるようになっています。

これによって、「大吟醸酒は米本来の旨みが低下する」と酒通(つう)の人が口にしていたことが改善されて、吟醸のよさを活かした「吟醸酒なのに実は大吟醸レベル」という日本酒づくりが可能となっています。

この変化を紹介する前に、従来の普通精米と呼ばれている一般的な「球形精米」について触れておくことにします。

米は形によって短粒種と長粒種に分けられています。日本で食べられているのはジャポニカ種と呼ばれる短粒種で、酒米も楕円形の短粒種です。この楕円形の酒米を精米機にかけると短い軸を中心にして回転して、長い軸のほうが多く削られていきます。

こうして丸い形状にしたのが従来の普通精米で、“真珠のよう”とたとえられる球形となります。この状態では酒米の30%ほどが削られることになります。

これに対して新たな精米法として登場したのが「原型精米」で、米の長さ、幅、厚みを均等の割合で削っていくことから、精米後の形が玄米と同じような形状になります。

雑味の原因となる物質は、表面から近い部分に多く含まれているため、球形精米よりも多くの部分を残して、球形精米と同じ状態の質とすることができるわけです。

これよりも進歩したのが「扁平精米」で、原型精米よりも厚みをさらに多く削って、幅は原型精米ほどには削らない精米法です。扁平の名前の通り、平べったい形になります。

扁平精米では、原型精米よりも効果的にタンパク質を除去できるので、精米歩合が高めであっても、雑味のない日本酒を作ることが可能となっています。

これによって本当に質が確保されているのかということですが、原型精米と扁平精米を比べた酒類総合研究所のデータを取り寄せて調べてみました。その結果は、日本酒の質として、ほぼ変わらないという結果でした。

私が好みの吟醸酒(純米吟醸酒)は、後で調べてみたら、扁平精米がほとんどでした。一般には精米法は公表されないことがあるのですが、扁平精米の精米機を納入しているメーカーから辿っていくことで確認することができました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕