日々修行204 裏取りの役割

しばらく会っていない人の姿をテレビの中で見つけることは、最近では、そうはなかったのですが、テレビ業界の不祥事のためにACジャパン(公共広告機構)の広告が急増したことで、2人の活躍を見ることになりました。

1人は中高年男性4人組ユニットの「おじキュン!」の黄色の腹巻きで踊る方で、「動けば町が元気になる」のテーマで、岡山県和気町の魅力を伝える活動の公共広告です。岡山に移住した初期段階で世話になった方です。

もう1人は「決めつけ刑事(デカ)」の嶋田久作さんで、東洋大学の出身の俳優さんです。

同じ年齢で、私は法学部で学びながら教授のお情けでインド哲学の授業を受けさせてもらっていました。嶋田さんは文学部哲学科の正真正銘の学生で、当時から目立つ風貌で、学生の劇団にも所属していました。

衝撃の再会をしたのは(といっても当時は映画のテレビコマーシャルを見ただけ)、1988年の「帝都物語」の魔人の俳優でした。

嶋田久作という名前には馴染みがなくて、初めは「世の中には、よく似た人がいるものだな」との感覚でした。嶋田さんの名前は、哲学科で学ぶ哲夫さんとの記憶がありました。

私の知人にも同じ年齢の嶋田さんがいたので、名字も名前も記憶に残っていたのですが、俳優は本名でなく芸名を使うのは普通のことで、“決めつけ”をしてはいけないということを再確認しました。

ACジャパンの「決めつけ刑事」は、誰が発信したかもわからない不確かな情報でも、時に拡散によって、あたかも信憑性のある情報かのように擬態して、結果として何の罪のない人を傷つけてしまうということに警鐘を鳴らしています。

素性のわからない人の発言をSNS上では多くの人が額面通りに信じてしまっているという事実を、強面の嶋田久作さんの演技で伝えています。
決めつけや思い込みは間違いの元ということは、何もSNSに限ったことではなくて、テレビ報道が始まった時から言われてきたことであり、そのようなことも実際に繰り返し起こっています。

SNSやネット情報は、もっと間違いの元が多い世界ですが、その情報からテレビ報道や雑誌の記事が作られていくことも普通に起こっています。

従来であれば新聞報道を元にして、それを雑誌記事が膨らませ、それをテレビ報道が一般受けするように伝えていくという流れがありました。SNSやインターネットの普及で、テレビ報道に個人の意見や感情を交えて伝えていくように変化していきました。

ところが、テレビ報道でもSNSの発言をインタビューをしたかのように使うことが増えてきて、遂にはSNSで伝えられたことがテレビ報道に影響を与えることも起こっています。

こうなると情報の裏取りをするのは、面倒であり、厄介なことでもあって、裏取りなどしたくないところですが、私がテレビ番組や食品(納豆、豆腐、豆乳など)の全国広報に携わっていたときには、裏取りが役割でした。

取材先や監修者の専門家の先生が、実はあやふやな情報、他の方が言っているので事実であろうという感じで、困った発言をすることは、いくらでもありました。監修を受けていることをチェックする“監修の監修”が仕事だったこともあります。

今の時代に、それを求められても裏取りが困難な状況だけに、そんな業界から離れて、岡山でひっそりと暮らしていることに安心しているところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕