「金さえあれば、よいものを味わうことができる」ということを平気で話す人がいるのは、何もバブル経済社会に限ったことではなくて、今も同じようなことが続いています。
ただ高級食材を使って、シェフが調理をした高価格の料理を食べれば、それが“よいもの”となるわけではありません。
料理そのものがおいしいのは、おいしく食べるための第一段階で、よく噛んで食べないと料理本来の味を引き出すことはできなくなります。噛むことによって分泌される唾液が味わいを変えることになります。
唾液に含まれる消化酵素のアミラーゼは、ご飯などのデンプンと混ざることによって甘みが増して、おいしさをより感じるようになります。
よいもの、おいしいものを食べるときには、ゆったりとした気分で時間をかけて食べることが多いので、よく噛んで食べるようになるので、結果としては高いものを食べている人は“よいものを味わっている”ということになりそうな感じがします。
しかし、実際の食事の場面を見ていると、「そんなにガツガツして食べていると、せっかくの味わいがわからなくなる」という人も少なくありません。そんな人には咀嚼(そしゃく)についての話をさせてもらっています。
咀嚼は、よく噛んで食べることで、その効果としては唾液によって消化を助けることが第一にあげられます。このほかにも病気予防や脳の活性化などの、さまざまな効果が得られます。
これらの健康効果は「卑弥呼の歯がいーぜ」と表されています。
卑弥呼の時代には固いものを食べていたので歯がよくなければ生きていけないということも表してはいるのですが、それぞれの文字が健康効果を表すために当てられたのが「ヒミコノハガイーゼ」です。
「ヒ:肥満防止」よく噛んで、ゆっくりと食べることは食べ過ぎを防いで肥満を防止する。
「ミ:味覚の発達」噛むことで食べ物の形や固さを感じるとともに、唾液によって分解されて食品本来の味を感じることができる。
「コ:言葉の発達」口の周りの筋肉をよく使うことで、あごの発達を助け、表情が豊かになったり、言葉の発音がきれいになる。
「ノ:脳の発達」脳に流れる血液の量が増え、酸素と栄養素が送られるため、子どもは脳が発達し、大人は物忘れを予防し、高齢者は認知症を予防することができる。
「ハ:歯の病気予防」よく噛むと唾液が多く分泌され、食べ物のカスや細菌を洗い流す作用によって虫歯や歯肉炎の予防になる。
「ガ:ガンの予防」唾液に含まれる酵素(ペルオキシダーゼ)が食品の発がん性を抑える。
「イー:胃腸快調」消化を助け、食べ過ぎを防ぎ、胃腸の働きを活発にする。
「ゼ:全力投球」身体が活発になり、力いっぱい仕事や遊びに集中できる。
このほかにも、よく噛むことによって、満腹中枢が刺激されて、多くの量を食べなくても満腹を感じやすくなる効果や免疫力の強化、最近では頭皮の血流をよくして抜け毛を防いだり、毛髪を太くするという気になる人が多いであろう効果も確認されています。
私の場合は、その気になる効果を求めるべきかもしれないところですが、他の効果のほうを先に掲げるようにしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕