日々修行235 沖縄の冷奴

昭和で言えば100年にあたる今年(2025年)は、年代差のギャップが話題になることも多く、テレビ番組の格好のネタになっています。用語をあげて、聞いたことがあるか、意味も知っているかということから年代差を明らかにするという内容です。

それぞれの業界で年代差がわかる用語というのがあって、私が全国PRに関わった豆腐業界でも、料理名が年代によって通じないことがありました。年代というよりも地域によって通じないこともありました。

その一つが冷奴(ひややっこ)で、暑い時期に限らず、いつでも食べられるものであるので、季節に関わらず話題にしやすいものでした。

2003年から始まった豆腐PRの特設ホームページのコラムにも書いたのですが、地域の気候を考えたら当たり前のように食べられているだろうと思われがちな沖縄には冷奴がない、ということでした。

冷奴といえば、冷やした豆腐を四角に切って薬味や調味料を添えて食べるシンプルな料理です。

江戸時代に武家につかえる身分の低い奴(やっこ)と呼ばれる家来が着ていた着物の紋が四角柄だったことから、四角の豆腐を奴と呼ぶようになり、それを冷やしたものなので冷奴と呼ばれるようになった、というのがコラムなどの定番ネタです。

沖縄は1年を通じて夏のようなイメージがあるので、冷奴も普通に食べられていて、さまざまな薬味が使われているのだろうと勝手に想像していました。

そのコラムを書く直前に、別の用事(確か週刊誌の食品関係の記事の取材)で沖縄に行くことになり、豆腐についてリサーチの一環として何軒か飲み歩きました。

そのときに驚いたのは、どの店のメニューにも冷奴が書かれていなかったことです。当たり前すぎてメニューに載せていない、言えば出してくれる裏メニュー的なものかと思って聞いてみたら、「冷奴??」という反応ばかりでした。

冷奴と呼ばないのかと思って、これも聞いてみたところ、そもそも豆腐を冷やして食べるという習慣がないとのことでした。沖縄では堅い島豆腐が一般的で、煮物にしてもチャンプルーにしても崩れにくく、食べ応えがあるのが特徴です。

それもあって沖縄では“あちこーこー”という、作った島豆腐を冷やさずに温かいまま提供する食文化があって、わざわざ冷やして食べるのは邪道という感覚もあるようでした。

それでも冷めたい状態で食べたいということで、冷蔵庫に保存してあったものを出してもらったのですが、これは温めたほうがおいしいと感じたものです。

それでも冷えた豆腐を楽しみたいという人(主には観光客?)の要望もあるのではないかと考えて、豆腐PRのコラムにも書き、各メディアへのニュースリリースにも話題の一つとして載せました。

その結果だけではないとは思うのですが、今では沖縄では冷奴は通常のメニューとして多くの飲食店で出されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕