日々修行250 左利きの矯正

日本の文字は右利きを原則として作られているので、左利きには不利となるという認識がありました。そこで字を書く機会が増える小学生になる前に矯正されるということは当たり前のように行われていました。

左利きの割合は世界的には10%ほどです。日本人の場合には右利きが88.5%、左利きが9.5%とされています。残りの2%は何かというと両利きです。

自分のことで言うときに“二刀流”は言い過ぎかもしれませんが、私は幼いときには左右ともに同じように使えました。

しかし、3歳から母親の実家の寺院に預けられていたときに、お寺の仕事は右利きでないとやりにくいこともあって、右利きが得意となりました。弟は左利きで生まれ、親元で育ったので、そのまま矯正せずに左利きを貫いています。

利き手(腕)だけでなく、“利き足”というものもあって、足の器用さということでは利き腕と同じほうが利き足になっている例がほとんどです。ところが、身体のバランス感覚ということでは腕の右利きの人は左足のほうが力が強く、これは器用に動かすことができる足の動きを支えるための土台となっています。

武道として剣道、柔道、空手、少林寺拳法を学んでいたので、前に踏み出す足よりも、蹴り出す力があって、踏み出す足を自由に動かすための土台となる利き足の重要性を感じていました。

片足立ちをしたときにもバランスが取りやすいというのが多くなっています。目を開けての片足立ちではバランス能力の違いはわかりにくいかもしれませんが、両目を閉じての閉眼片足立ちでは、持続時間に差があり、どちらが利き足なのかを知ることができます。

利き目というものもあります。どちらが視力がよい、動体視力に優れているということではなくて、左右の目から入ってくる視野情報の優位性を指しています。どちらの目で見た情報を優先させるかという能力で、利き目のほうが視界の幅が広くなっています。

このことは鏡を前にして片目ずつ閉じて、どちらの耳が広い範囲まで見えるかで確認できます。

利き手に関係するのは右脳と左脳のバランスで、右利きは左脳が優位に働き、左利きの人は右脳が優位に働いていると言われます。

右脳の働きは男性ホルモンのテストステロンによって影響を受けることが知られています。また、男性ホルモンのアンドロゲンが左脳の発達を遅れさせるという研究もあり、男性は左利きが現れやすくなっています。

これを右利きに矯正しようと強制することは男性のほうが脳の負担が大きくなることを示しています。

この差は、強制されて、もしくは矯正されて文字が書きにくい状態で書き続けてきた人ということで、脳の機能と使う手の動きが合わないまま苦労をしてきた結果、それが学習の状況にも少なからず影響を与えてきました。

左利きは右脳の働きが優れているとも言われますが、右利きの95%が左脳で言語系の処理をしているのに対して、左利きでは75%が左脳で処理をしていることが研究によって明らかにされ、あまり違いがないことがわかっています。

右利きは文字を書くときに左脳だけで処理をしています。左利きは左手を動かして右脳を使いながら左脳で言語処理をするため、処理に時間がかかります。

通常では、時間的な問題はほとんど関係ないものの、学習障害があると処理の時間が長くかかるようになり、これが書字に影響を与えることにもなっています。

私が発達障害の中でも学習障害の改善に関心をもって研究に取り組んできたのは、自分の経験が関係してきただけに、まだまだ研究は続きそうです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕