財団法人というと、以前は格調が高い団体という印象があって、設立するためには最低でも1億円は用意しないといけないという事実が大きく関係していました。
1億円というと、それほどの金額ではないという人がいないではなくて、その金額を用意するから財団法人を設立してほしいという依頼を受けたことが何度かあります。
その依頼は、今の特定非営利活動法人(NPO法人)の設立くらいの軽い感じでしてくる人が多かったのですが、1億円は基本財産であって、資本金のように取り崩して使うことができるものではないことを説明すると、多くは設立を諦めてくれました。
基本財産を使うことができるのは解散をしたときだけであって、それまでは“1円も動かすことができない”という性格のものです。調査が入って、基本財産を預け入れている銀行などの口座の金額が基本財産の額を下回っていたら、財団法人は取り消しになるという条件がつけられていました。
金利が高かった時代なら、利息を活動資金にすることも考えられたものの、低金利の時代には、それも望むことはできません。多くの財団法人が低金利で、資金不足になっていることも数多く見てきました。
それでも設立したいという人がいて、そんなに金が余っているのかと思って聞いてみたら、財団法人の設立の目的が民間資格を国家資格にするためで、私が知っている政治家の政策秘書のアドバイスで株式会社を財団法人にするということでした。
これについては、まずは無理であろうという話をさせてもらいました。
国家資格は政治家に働きかけて、所管する霞が関のお役所を動かせば、かなえられるというものではありません。国家資格には、専門の法律が必要で、法律を作らせるだけで、どれくらいの期間と手間がかかるのか、そのために必要な“活動費”だけでも数億円はかかるとされていることを伝えました。
これは昔話のようなもので、2008年に公益法人制度が改革されて、これまでの財団法人は5年以内(2013年まで)に移行の選択をすることが定められました。
移行の選択の道は2つで、公益財団法人か一般財団法人です。公益財団法人となるためには、厳しい国の審査があって、それまでの財団法人が必ずしも公益財団法人になれるわけではありません。
公益財団法人なら税務上の優遇は続くのですが、一般財団法人となると税金の扱いは株式会社と大きく変わらない状態です。一般財団法人の基本財産は300万円以上なので、従来の有限会社と変わらない金額で、その扱いにも大きな違いがあります。
公益財団法人の移行のための手続きは、あくまで財団法人の役員や職員の仕事ですが、手続きが大変なことから妙なコンサルタントも多く登場して、初めから無理なところが騙されていたこともありました。
私は、あくまで知人のアドバイス程度ということにして、複数の財団法人を公益財団法人に移行するためのサポートをさせてもらいました。実際にサポートしたところの話は次回(日々修行252)にさせてもらいます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕