日々修行29 「無理なく無駄なく」の発想

今どきの書籍の原稿はパソコンの文章制作ソフトを使うことが普通なので、文字数計算はA4サイズの用紙の枚数で示されることが多くなっています。これだけの文字を書く(打つ)ためにかかる時間、その時間の対価としての原稿料もA4サイズの用紙の枚数で計算されます。

パソコン、ワープロ(ワードプロセッサー)の時代の前は原稿用紙1枚(400字詰め)が単位で、それはキーボードで打つ時代になってからも、しばらく続いていました。

私がゴーストライターを集中的にしていた時代は、手書きからワープロ、パソコンに移っていましたが、まだ原稿用紙1枚で何枚分という計算をしていました。

文章作成ソフトではA4の1枚は40文字で30〜35行が基本なので、1枚あたり原稿用紙で3枚分と計算されます。

書籍(単行本)1冊は、400字原稿用紙で300枚が大原則で、これだけの分量だと220ページの書籍になります。A4用紙だと100枚が単行本の目安となります。

これだけの分量を著者として自分で書いた場合の印税は8〜10%が通常です。私が関わっていた大手出版社は10%でした。この著者印税の30%、全体の3%がゴーストライターの取り分です。

当時は1000円の書籍も多かったので、1冊分を書き上げると30万円とのが大雑把な計算でした。書籍の価格が上がっていってからも、なぜだか1冊が30万円という時代が長く続きました。

取材から執筆、ついでに編集、校正まで合わせると通常では1週間はかかるので、月に1冊を仕上げると30万円というのが、25歳から40歳までの売り上げでした。

仕事が重なったときには2週間で3冊を書いたということがあったものの、通常は1か月に1冊のペースで、当時は他にも違うタイプの仕事をしていたので、いかに時間を短縮するかが大きなテーマでした。

限られた時間を有効に使うためには、書きやすいところから書く、長く書いていると効率が落ちるので昼寝をする、乗ってきたときには行けるところまで書く、ということで、通常の生活時間を無視したパターンで仕事をしていました。

しかし、このような生活パターンが健康面でよいわけはありません。ゴーストライター仲間の中には、「文章の修行になるから」といって若手のライターに安く下書きをさせて時間短縮をしていた人もいました。

私にとっては、それこそ修行のような文筆であったので、全部自分で仕上げていましたが、それが「無理なく無駄なく」という今のスタンスにつながっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕