日々修行302 輸入に頼る野菜の種

日本の野菜の自給率はカロリーベースで79%というのが農林水産省の公式発表であるのに、実際には90%は輸入に頼っているという話を前回(日々修行301)書きました。それに続いて、そのようなことになった理由について書かせてもらいます。

日本の種苗会社は、サカタのタネ、カネコ種苗、タキイ種苗が多くを占めていますが、その販売先は国内だけでなく海外にも多くを販売しています。

日本の野菜の種は優良で、これを輸入して、育てやすく、収量が多くて、おいしい野菜を育てようという国は世界に及んでいます。

品種改良によって優れた種を開発しても、その種を日本で拡大栽培するのは難しいことです。

その優れた種はF1種(一代雑種)で、異なる品種を交配して新たな品種を作り出す品種改良法で、狙いどおりの品種を作り出すことはできても、自家採種ができないというデメリットがあることも前回紹介しました。

そのために毎年、種を買い続けなければならないわけですが、肝心の種を育てる環境という点では日本は劣っています。

日本の野菜の種を「工業製品のようだ」と評した研究者もいて、規格どおりの野菜が栽培できるようになったものの、その種が気候変動の続く日本では一定の水準に保つことが難しいという状況にあります。

日本は国土が狭い、さらに育成面積が狭い、狭さのために交雑しやすいということに加えて、高温多湿、梅雨の時期、雪の季節は種の育成には向いていません。

また、日本は海外に比べると人件費が高くて、輸入しても安くつくという国は多く存在しています。また、栽培する地域を世界に広げることで、リスクを分散させるというメリットもあります。

それは気候変動だけでなく、政治的リスクや輸入ルートの変化ということも関係しています。日本に輸入される野菜の種を国別に見ていくと、輸入ランキング(数量)はアメリカ、イタリア、デンマーク、チリ、ニュージーランド、中国の順になっています。

日本の種苗会社が海外で栽培して、日本に輸出しているといっても、円安が続くと、種の価格が高くなる、そのために野菜の価格も高くなるということになります。

気象によって栽培量が減るので高くなる、栽培量が増えると安くなるという、これまでは当たり前と考えられてきた農業生産物の常識が通じにくくなっているのです。

日本の種苗会社は海外の生産地から、他の国に輸出もしていて、その動きに拍車がかかっています。これは世界の気候変動が大きな理由で、気候変動に左右されにくい品種は世界が求めているものです。

世界に広まっていったら、日本に回ってくる種が少なくなることは考えたくはないのですが、絶対にないとは言えないのが現状です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕