ここのところ病院給食が修行になっていたのか、そこばかりを書いていますが、それだけ自分にとって先々に進めていく基点になったことであり、修行の本格的な始まりになったとの思いがあり、あと少し書いていくつもりです。
「病院給食はおいしくない」との声を受けて、疾病の改善には仕方がないことである、臨床栄養の立場では個人の希望ばかりを受け入れているわけにはいかない、という提供側の声があるのも理解はしています。
私は医療の専門家でも臨床栄養の専門家でもなくて、それらをまとめる役割、そして問題点や改善点があれば、それを伝えていく役割だとの認識で、医療分野における食事を見てきました。
おいしいというのは、食器に乗せられている料理の出来だけにかかっていることではなくて、食事環境も食器も提供の仕方も関係しているということを何回かに分けて書いてきました。
ある大学病院では、医療レベルに比べて食事の内容が低いことを指摘されて、すべての改善を行ってきたのに、まったく評判が変わらないということから改善点の相談をされたことがあります。
病院給食の作り手は、配膳カートに乗せて病室の近くに運ぶところまでが役割で、そこまでを改善しても、そこから先が変わらないと食事としての改善につながらないことがあります。最終的に患者のところに食事を提供するのは看護師や、その補助をする人の役割です。
ただ運ぶだけではなく、食事を通じて患者の状態を把握することも大切で、あまり食べられない入院患者に対する態度や声掛けも重要になります。配膳だけでなく下膳も大切で、食べ終えた食器をトレーごと回収して配膳カートに戻せば終わりということではありません。
提供した食事が、どれだけ食べられたのか、その結果は栄養摂取の状態を把握する管理栄養士に伝わる必要があり、約束食事箋(栄養素の摂取量を指示したもの)として指示した医師にも伝わって、初めて食事は完了したことになります。
その病院に限ったことではないのですが、トレーに食事をした入院患者のプレート(氏名や食事の内容が書かれたもの)が乗せられたまま回収できていれば、食事の状態は把握できるのですが、回収後のトレーとプレートが別々に集められていました。これでは回復具合と食事の結果を対比してみることができなくなります。
その病院では、時間通りに全員に配膳をするのが当たり前に行われていましたが、検査などで通常の食事時間に遅れてくる入院患者もいます。そのことを看護師は把握しているはずなのに、ベッドの食事台に置きっぱなし、ラップなどで汚れないようにするという配慮もされていないということが普通に行われていました。
食事を作るスタッフは料理の温度にも気を使い、配膳カートは温冷の区分けがある最新のものが使われていて、「温かいものは温かいままに、冷たいものは冷たいままに」をキャッチフレーズにしていましたが、置きっぱなしでは看板倒れもいいところです。
病棟の中には冷蔵庫も電子レンジもあって、そこの小部屋に置いておき、入院患者が戻ってきてから温度管理をしたものを、安全な状態で提供するという当たり前のことを提案しましたが、それだけで急においしいとの評価が増えていきました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕