「病院の経営者は自分の病院に入院して実際の食事を食べてみればいい」とアドバイスするのは、病院給食がおいしくないと言われていることを承知している経営者・経営陣だけでなく、自分のところの病院の給食は問題ないと思っている経営者なども含めています。
問題がないと思うだけでなく、周囲に言い切っていた院長が体験入院を2日間した後に、これまで栄養管理部門から要望を出しても聞き入れられなかった病棟への電子レンジの導入が、すぐに決まったということがありました。
これは民間経営の病院の話ですが、公立病院、中でも国立病院は電子レンジの導入は夢の世界と言われていた時期がありました。院長などが入院体験をして電子レンジが必要ということがわかっても、これを自治体や国に要望しても、なかなか聞き入れてもらえなかった時期が長く続きました。
これが急に大転換した時期があります。そのきっかけとなったのは、国立病院に厚生労働省の幹部の家族が入院して、「冷たくておいしくない」という声が直接届いたことでした。翌年の予算に全病院の各病棟への電子レンジの導入が決まりました。
そして、電子レンジが届けられたのですが、すぐには使うことはできませんでした。業務用の電子レンジであったため、通常のコンセントでなくて200ボルトに対応するための工事が必要で、これにも予算がついて使えるようになるまで,さらに数か月がかかりました。
食事のおいしさの評価には、温度も重要な要素で、温かい料理は温かいまま食べることでおいしく感じるということは前々回(日々修行60)に書きました。おいしく感じる温度は、体温との温度差が25℃以上とされています。温かいものは62℃以上、冷たいものは12℃以下となります。
温かいものは、あくまで温かいという範囲であって、70℃以上となると温かいから熱いという感覚になります。
食中毒の原因となる菌が増殖しやすい温度帯は35〜40℃であるので、温かいものを温かいまま提供するのは、安全な食事を提供することとイコールだったのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕