「100kcalダイエット」を講習テーマとして掲げると、「100kcalしかやせないのか」という質問をされることがあります。「100kcalを減らすと体重はどれだけ減るのか」という質問もあるのですが、そのような意味ではありません。
体脂肪1kg分は7200kcalに相当するので、100kcalを減らしても望むような結果にはなりません。1日に2400kcalを食事で摂取している人だと、“3日間、飲まず食わず”で体脂肪が1kg減らせるということになります。
「100kcalダイエット」は、食事を100kcal単位で考える方法で、食品を重量ではなくエネルギー量で選択して、自分にとって必要なエネルギー量を摂ることを目指したものです。
一見すると当たり前のことに思われるかもしれませんが、今の日本の栄養学は80kcalを基本としています。80kcalでは計算しにくいので、80kcalを1単位と表現しています。しかし、病気などの予防・改善のための食事は1日に1600kcalといったように100kcalを基本として提示されています。
1600kcalなら80kcalの20倍なので、まだ計算しやすいものの、1700kcal、1900kcalとなると、割り切りにくくて、理解も実践もしにくくなります。
そんな計算しにくい80kcalが今も採用されているのは、今から80年も前の終戦後の出来事があったからです。
終戦後の食糧難で、肥料・飼料不足で食品の育ちが悪く、食品の1食分が小さくなり、そのエネルギー量が80kcal前後となっていました。これを戦後の緊急措置として80kcalを1単位として対応することが日本栄養・食糧学会で提案され、多くの賛同が得られました。
これを女性の栄養教育を実践する大学や日本糖尿病学会が採用してから、戦後の食事の改善の基本とされ、それは今も続いています。
しかし、今の食品の栄養状態と日本人の摂取量は100kcalを基本とするのが相応しい状態になっているのに、80kcal=1単位の状況は変わっていないのです。
国が全体として80kcalで栄養改善を進めてきた中で、ただ一つ100kcal栄養学で対応してきたのが慶應義塾大学病院です。同病院の食養管理室のトップが、私が主任研究員を務めていた病院栄養管理HDS研究所の研究仲間でもあったことから、100kcal栄養学の普及にも加わりました。
100kcal単位の栄養摂取の内容については次回(日々修行83)で紹介させてもらいますが、栄養学を学んだ人でなくてもわかりやすく、自分でも実践していることであり、講習などを通じてすすめていることでもあります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕