私が所属していた病院栄養管理HDS研究所は東京・お茶の水駅が最寄りの神田明神の近くにあり、その当時は日本ウオーキング協会の前身団体の日本歩け歩け協会の事務所も神田明神の近くにあって、神田明神を挟んだ位置にあっても普通に歩いていける距離でした。
健康に関わる栄養とウォーキングという関係性から親しみを持って接していて、互いの事務所を行き来していました。
HDS研究所は厚生労働省の仕事もしていて、日本歩け歩け協会は環境省の所管に厚生労働省の共同所管を目指していたこともあって、厚生労働省で役員と会うこともありました。
歩くことを健康づくりの基本とすることは厚生労働省も望んでいたことで、当時の私は厚生労働省に関わる複数の団体の立ち上げや広報なども手掛けていたことから、日本歩け歩け協会にも頻繁に行っていました。
その当時から、超高齢化時代の健康維持にウォーキングをいかに活用するかは大きな研究テーマでした。
外出をして歩くことは健康維持の基本ですが、近年は歩行数が大きく減ったことによって、全年齢層の筋力低下、体力低下、心肺機能低下、生活習慣病の増加が懸念され、さらに高齢者については免疫低下、認知機能低下も叫ばれています。その不安に拍車をかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大による外出の自粛でした。
歩く機会が極端に少ない状況では、筋肉の量は1日に1%が減少することが指摘されています。高齢者は特別な筋肉トレーニングをしない限りは、1年ごとに筋肉の量は1%ずつ低下していくとされていて、寝たきりのような状態で1日をいるだけで、1年分の筋肉が落ちていくことになります。
2週間も寝たきり状態だと高齢者は筋肉が23%減少して、若者の場合では28%も減少することが確認されています。外出自粛が3年も続き、この筋肉を元の状態に戻すためには、効果的な筋肉トレーニングであっても3倍以上の期間がかかります。
全身の筋肉量の70%ほどを占める足腰の筋肉量の低下は、さまざまな機能低下をもたらすことは明らかです。新型コロナウイルスの感染拡大による医療崩壊が懸念されましたが、医療機関の崩壊だけでなく、医療を受ける側が歩かないことによって医療崩壊、介護崩壊につながりかねないことも大きな懸念材料となりました。
誰も経験したことがない超高齢社会が進む中、医療と介護の重要性が高まり、従来の医療システム、介護システムでは支えきれないことが新型コロナウイルス感染拡大を通じて肌で感じられるようになりました。
感染拡大が収束して、元の生活に戻れば健康度も回復しするという甘い考えは通用しなくなります。それだけ長い期間の運動不足、歩行不足は身体にも社会にも大きな影響を与えてしまったのです。
その回復のためのアドバイスは、どこまでできるかわからないところがあるものの、できる限りはやりたいという思いです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕