日本人の腸は牛乳に弱い

牛乳を飲むと、お腹が張る、ゴロゴロする、下痢をするという状態が現れることがあります。この状態は乳糖不耐性と呼ばれています。乳糖不耐性は、乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する乳糖分解酵素のラクターゼの分泌が低下しているために起こるものです。赤ちゃんのときにはラクターゼが分泌されないと母乳から乳糖を取り込むことができないために、分泌量は多くなっています。
歴史的に乳製品を多く摂ってきた欧米人は、乳糖分解酵素の分泌量は年齢を重ねるにつれて赤ちゃんと比べると減っていくものの、乳糖不耐性は8%ほどで、それ以外の人はほぼ全員が成人になっても多く分泌させることができます。
ところが、乳製品を歴史的に摂ってこなかった日本人は、離乳期以降に急激に分泌量が減って、80%ほどの人がまったく分泌されなくなります。分泌される人でもピークの20%ほどに低下するといいます。そのため、乳糖が消化・吸収されずに大腸に運ばれ、大腸で腸内細菌によって発酵することによってガスが多く発生するために、腸の不調が起こると考えられています。
お腹の調子がよくないというのも問題ではあるのですが、それよりも気になるのは消化も吸収もされなかったら栄養源にならないということで、牛乳を飲んでいても重要なエネルギー源である糖分が身体に入ってこないことになります。
牛乳は、そもそも牛の赤ちゃんが飲むものだから人間に合うものかわからない、という考え方をする人がいて、それどころ人間が飲むものではないので健康によくない、という考え方をする人まで出てきています。人間の身体に合わない牛乳を飲むと、栄養にならないだけでなく、かえって身体によくないという主張をする人もいます。中には、牛には成長ホルモンが使われているのでホルモン異常を起こすから危険だという人もいます。ここでいう成長ホルモンは無理に太らせるためのホルモン剤であって女性ホルモンの一種ですが、子どものときにしか使うことができないので、正しく使われていれば牛乳の中に含まれることはないはずです。実際に牛乳の中から検出されるホルモンというのはIGF‐1で、これはインスリン様成長因子です。大豆にも含まれているもので、身体に影響が出るほど含まれていません。