日本人は腸の吸収率が高いことのデメリット

日本人は低栄養の時代が長かったことから、腸は長くなり、食べ物の腸からの吸収率を高くすることで栄養不足を補ってきました。これは健康面ではプラスに作用したのですが、あくまで栄養が不足している時代のことで、普通よりも栄養摂取量が多くなった時代にはマイナスに作用しています。特にマイナスになっているのは脂肪の摂取で、これが血管の老化を進め、日本人の死因の2番目の心疾患(心臓病)と4番目の脳血管疾患を増やす原因となっています。
中でも肉類に多く含まれているコレステロールは、日本人の健康に大きな影響を与えています。肉類の摂取量が伝統的に多い欧米人に比べると、日本人のコレステロールの摂取量は欧米人の80%ほどとなっています。一時期は「50%も摂取している」と言われたものですが、いつの間にか増え過ぎてしまいました。摂取率が80%なのに、血液中のコレステロール量を測定すると90%を超え、男性は適正値の上限にまで達しています。
日本人でコレステロール摂取量が最も多いのは肉食が多い10代後半から20代前半の男性で、欧米人の90%ほどの摂取量率ではあるものの、血液中のLDLコレステロールの量は欧米人と同様か、それを超えていることが確認されています。
低栄養の食事から効率よく栄養成分を取り込むために、日本人の腸は長くなり、腸壁からの吸収度合いも高められてきたわけですが、特にエネルギー量が高い脂肪に対しては有益なエネルギー源として吸収能力が高まっていきました。
脂肪の吸収能力の高さは低栄養の時代には優れた能力であっても、栄養過多の時代にはコレステロールや中性脂肪、ブドウ糖が吸収されすぎることになり、これが各種の検査数値を上昇させ、肥満、糖尿病、高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、高血圧症といった生活習慣病へと向かわせる結果となっています。