日本人の体質とヒトケミカルの関係について、メディア関係者から「しつこい」と言われるほど繰り返し書いてきました。もう、そろそろいいのじゃないか、と言うつもりなのか、「日本人はヒトケミカルが大きく減っているのだから、サプリメントで摂れ」と結論を述べればよいのではないか、とのメールが送られてきました。
サプリメントとして摂ったほうがいい、と言って、そのとおりやってくれて、体質の問題をクリアしてくれるなら、そんな簡単なことはありません。なぜ必要なのかを充分すぎるくらいに説明して理解してもらわないと決断してくれない、やったとしても続かないので、さらに述べさせてもらうことにしました。
日本人に限らず、若いときには三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は体内で多く合成されて、それがエネルギー代謝に使われるので、糖質のブドウ糖も脂質の脂肪酸もエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)に効率的に変化して、活動のためのエネルギーが多く作られます。若いときには疲れにくく、元気に動くことができるわけですが、年齢を重ねて三大ヒトケミカルが多く合成されなくなるとエネルギー不足になりやすく、疲れる、元気がない、免疫が低下する、消化力が低下する、といったように老化の反応が起こるようになります。
日本人は歴史的に脂肪を多く摂ってこなかったために脂肪酸の代謝に必要なL‐カルニチンの合成量が少なく、これだけを見ても欧米人よりもエネルギー代謝が低く、エネルギー量に注目すれば同じ年齢でも年を取っているのと同じことになります。日本人は歴史的に長生きしてこなかったことから、年を取ってから多くのエネルギーを必要としなかったこともあり、60歳を過ぎると急に三大ヒトケミカルの合成量が減ってきます。
日本人が世界トップクラスの長寿になったのは環境、経済、栄養、運動、医療など、さまざまな要因、さまざまなラッキーが重なったからと考えられますが、長生きになったのにエネルギー代謝のために重要な三大ヒトケミカルが大きく低下して不足した状態になっているのでは、加齢の速度以上に身体の中は老化が進んでいることになります。
言葉の扱いとしては、どうかと思いますが、“生ける屍(しかばね)”と言う言葉があります。生きていることには違いがないものの、まるで死んだような状態になっていることを指しています。ここまではなっていなくても見た目は健康そうで、年齢相応、年齢よりも若く見えるのに身体の中は実年齢よりも老化しているという人は案外と多くなっています。こういったことが平均寿命と健康寿命の差を大きくする要因となっています。
日本人は平均寿命こそ世界のトップクラスにあるものの(昨年に男女平均で世界1位から世界2位になった)、平均寿命が延びた分だけ健康寿命との差が長くなっています。健康寿命は他の人の手を借りずに、自立して自由に暮らせる状態である年齢を指していて、その差が大きいということは、実年齢よりも運動機能が低下していて、血管の疾患(心臓疾患、脳血管疾患)によって自由に動けないということを示しています。
その原因の中で大きな割合を占めているのが三大ヒトケミカルの不足によるエネルギー代謝の低下、エネルギー不足による身体機能の低下と考えられています。
三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。