時代劇の時代考証が気になる

民放で2時間の時代劇が盛んに放送されていた“時代”があります。地上波のことで、今でいえばCSの時代劇専門チャンネルのような放送時間と内容でした。たまたま知り合った大手広告代理店のテレビ担当者の紹介で、勉強のためにということで京都の撮影所に送り込まれました。といっても、当時は物書きを始めたばかりで、たまに地上波の時代劇の帯番組の台本の手伝いをしていたくらいで、撮影所でできることはないので、記録係に回されました。
記録といっても、台本に合わせて各シーンに登場する役者さんの当てはめと、役者さんのスケジュール確認、そして実際の撮影に参加した役者さんのチェックです。ずっと撮影現場にいて助監督などの確認に返答しなければならないので、食事とトイレ以外は決まった椅子に座りっぱなしでした。あまりに暇で、座り続けていればよいだけなので、映画関係者と雑談ばかりしていました。私がテレビ担当者の知り合いであったことから、何かと接触してくる方が多く、面白い裏話を、それこそ何冊も本にかけるくらいのことを聞き続けていました。これは後にゴーストライターをするときのインタビュー技術として役立ちました。
撮影現場を知ったことで、テレビや映画で時代劇を見ると気になることが多くて、いまだに変わっていないことは、今でも会話の話題にさせてもらっています。時代劇に登場する馬は、絶対に江戸時代には走っていなかったことは、広く知られていることかもしれません。登場する馬はサラブレッドです。サラブレッドが日本に初めて輸入されたのは明治10年のことです。
武士が乗っていたのはサラブレッドよりも小柄な在来馬で、体高(肩までの高さ)は135cmくらいです。サラブレッドの体高は170cmほどなので、時代劇では随分と高いところで演じていることになります。馬上から刀を振るって戦えたのも体高が低かったからで、小柄なのに鎧兜をつけて乗ったら、そんなにスピードが出なかったので、戦い方のシーンも違ってきます。
時代劇に登場する江戸の町の井戸は四角で、釣瓶(つるべ)を使って水を汲んでいますが、日本橋から日比谷、高輪にかけては真っ平らになっていて、これは埋め立てをしたからです。水道(木管)は浅いところを通っていたので、江戸時代の井戸は底のない桶を埋めて、柄杓(ひしゃく)で汲んでいました。他にも気になることはあるのですが、東京にいたときに“江戸を歩く会”で見聞きしたことは別の機会に紹介させてもらいます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)