普通歩行と超速歩きの繰り返しウォーキング

早歩きというと、中強度の歩行が有名になってきたこともあって、なんとか会話ができる程度の速さの歩き方だというイメージが抱かれるようになってきました。これは高齢者を対象とした健康研究で、1日に8000歩以上、そのうち20分以上の中強度の歩行が最も健康度が高く、これ以上の歩行は身体を傷める可能性があるという報告(中之条研究)を受けて、実践する人が増えてきています。
会話ができるレベルよりも強度が高いのが“鼻歌”を歌いながら歩ける程度で、これは人によっては高強度領域になります。こうなると“早歩き”というより“速歩き”になります。
これ以上の負荷がかかるスピードになると、これは有酸素運動のレベルではなく、無酸素領域の運動となります。無酸素領域というのは無酸素運動の入口のレベルで、有酸素運動であるはずのウォーキングが無酸素運動と同様になってしまうということで、そう長くは続けられなくなります。このレベルの強度を体験してみたいという人には、1分間の超速歩きを途中で入れるウォーキングを紹介しています。超速歩きは、とにかく一番早いスピードで歩くもので、走るところまではいかない限界の速度での歩行です。
これは、まず普通歩行を3分ほどした後にギアチェンジをして、必死のスピードで歩きます。歩行ということで、片足は必ず地面に着いています。一瞬でも両足が宙に浮くのが走るという行為になります。同じ歩くことであっても、普通歩行の速度では背筋をまっすぐに伸ばした姿勢でも歩くことができます。しかし、超速歩きとなると上体が立った姿勢ではスピードが最高レベルには高まりません。少し前傾姿勢になることで筋肉が強く使われるようになり、また足の力が路面に伝わりやすくなることでスピードが高められます。
この歩き方を言葉だけで理解できる人は少ないので、体感してもらうために、私たちは帯かゴムチューブを使います。これを左右ともに襷(たすき)掛けして、つまり胸のところでXになるようにして、端を他の人に持ってもらって後方から引いてもらいます。これに抵抗するように頑張って上半身、下半身に力を入れると、自然と前傾姿勢になります。これが最もパワーが出やすい姿勢となります。足を強く踏み出すためには、腕も大きく前後に使わないと勢いよく前進することはできません。
この歩き方を1分間頑張ると、筋肉の中に血液が多く取り込まれ、酸素も充分に送り込まれます。この状態で普通歩行をすると多くの酸素を使いながら、糖質(ブドウ糖)と脂質(脂肪酸)を効果的に燃焼させて多くのエネルギーを作り出すことができます。このエネルギーが運動の活力源になり、運動による全身の機能向上につなげていくことができるわけです。
この歩行姿勢による有酸素運動と無酸素領域の運動の活用法については、インターバルウォーキングや生活習慣病対策のウォーキングの指導の中で紹介しています。