有害物質の危険性は頻度で高まる

危険性があるものは一切摂らないというのは正しい判断なのか、過剰な反応なのかということがメディア関係者との対話の中でよくテーマにのぼります。危険性があることが確認されているものといっても、どれくらいの量と期間かによって健康被害の程度は大きく違ってきます。1回だけで被害が出るようなものでなければ、量が少なくて、使う回数が少ない、もしくは食べる回数が少なければ絶対に摂ってはダメということは言いにくいわけです。絶対に、ということを言い出したら、農薬も食品添加物も使えないことになります。
健康被害は「有害性の度合い×量×回数」という計算式が使われます。有害性は低くても、多くの量を毎回使うものとなると過敏な反応になるのは当然のことです。がんを気にする人が使っていたアガリクスというキノコの健康食品は一時期、大ブームになったのですが、精密な検査によって発がん性が認められる成分が含まれていることがわかり、一気にブームは萎んでしまいました。がん対策のものに発がん性ということでインパクトが強かったのもありますが、がん対策を考える人は多くの量を何回も、しかも長年に渡って摂っているので、これが掛け算の健康被害を高めることが指摘されました。
この健康被害の掛け算では「強さ×距離×時間」というものがあります。電磁波の健康被害の話で、よく使われます。例えばIH電磁調理器は強力な電磁波が出ていますが、使っている時間はそれほど長くはなく、少し離れて加熱調理することもできます。それに対して電気毛布は電磁波が弱くても、身体に密着させて、寝ている間ずっと使うので、掛け算の結果が大きくなります。高圧送電線は50万ボルトの電流で電磁波は強烈ですが、50m以上の高さで、「あまり人がいないところに通されるので健康被害の問題はない」と電力関係者は説明しています。
実際に人の頭や胸の高さでは6〜7マイクロテスラの電磁波です。日本の安全基準は200マイクロテスラなので、大きく下回った数字になっています。ただ、アメリカの州の基準は4マイクロテスラなので、これでは危険だと言う人もいます。どちらにしても高圧送電線の下を通る時間を短くする、少なくとも長時間とどまることは避けることです。ちなみに高圧送電線の真下から100mも離れれば安全な状態とされています。
食べ物の話に戻りますが、有害物質を減らすには同じ食材ばかりを使うことがないようにして、食卓にのぼる食材も種類をできるだけ増やすことによって口に入ってくる量を減らすことができます、このことを私たちは江戸時代の養生書の『養生訓』の中で使われている“御加数”を例示しています。おかずと読みますが、おかずは多くの種類の食材を使うことによって、色々な栄養素を摂ることができると同時に、安全のためでもあるということを伝えています。