東洋医学の師匠の教え

東洋医学と言ったら叱られてしまうかもしれませんが、医学にしても薬学にしても栄養学にしても、西洋医学一辺倒であった日本メディカルダイエット支援機構の理事長に、立ち止まって異なる発想から考え直す機会を摂るべきであると教えてくれたのは鈴木實先生です。鈴木先生は日本武道医学会の元理事長で、武道の世界に脈々と受け継がれてきた体操法を受け継いでいます。
武道医学は、いくつかの流派があり、戦いのための身体のケアをするのが現在の日本武道医学会の主流で、医学を活用した戦いの手法を受け継ぐ流派は多いのですが、各流派の基本として伝わってきた体操法は、あまり注目されてこなかったことから、今では伝えられていない流派も増えています。
体操というと学校の授業のような印象がありますが、「体を操る」という意味で、いかなる状況にあっても充分な状態で身体が動かせなければ敵と戦うことも困難な状況を生き抜くこともできません。疲れた、熱がある、酒に酔ったということでは、どんな達人であっても勝てません。そこで、常に身体の状態を最高レベルに保つための方法が生み出され、その一つとして今でいうツボ療法が取り入れられてきました。
ツボ療法は東洋医学の一つですが、ツボを刺激する方法は同じであっても、刺激する部位が少し違っています。その部位は急所です。急所は古くから伝わる武道では基礎中の基礎として学びます。急所に敵の攻撃が当たったら、大して強くもない刺激であっても動けなくなるほどの衝撃があります。そこで急所を知り、攻撃の手足、武器などが当たりそうになったときに、急所だけは避けるようにします。これなら少々痛い思いをしても、戦い続けることができなくなるということはありません。
急所とツボはまったく異なるものではなく、かなりの部分で共通したところとなっています。ということは、ツボだと思っていたところが実は急所であったということもあり、ツボは適度な刺激であれば身体にはよいものであっても、激痛を伴うような刺激は危険でもあるということです。
急所の知識は、いざというときに急所の知識は敵を動けなくして、その場から離れるためにも知っておきたいことではあります。そんなに凄い技なら先制攻撃に使わない手はない、と言ってくる人もいます。しかし、それは師匠の教えに反することです。鈴木先生は柔道の達人でもありましたが、戦って勝つのは当たり前のこと、戦わずして勝つことが最良であるが、どうしても一戦を構えなければならないときには、攻撃ができないようにして去るほうが正しいと言われていました。
病気との闘いにおいても同じことで、病気になってから手を施すのではなく、病気にならないように手を施すべきであり、そのために戦いに全力を尽くせる身体にしておくための体操術としてのツボ療法を、健康維持のために使うことを教えてくれました。それが急所のツボを刺激することで身体の状態を知る方法で、急所のツボに触れていくと他とは違った反応(張りやコリ、痛みや鈍痛など)があるところがあります。そこと経絡でつながっている臓器があり、まったく自覚症状は現れていなくても、正常ではない状態になり始めていることを知ることができます。
いわば診断術ですが、西洋医学では診断と治療は異なるものです。しかし、この方法であれば、状態を知るために使ったツボが、そのまま治療のツボとなります。ここが面白いことで、闘わずして勝つ方法として、健康づくりに急所を活用した「自分でできるツボ療法」を健康寿命の延伸を目指した活動の中に取り入れています。