果糖の糖度は砂糖の1.2〜1.7倍もありますが、エネルギー量としては1g当たり約4kcalとなっていて、これは他の糖質と変わりありません。しかし、ブドウ糖と果糖は脂肪を蓄積させる作用でみると、結果が大きく異なっています。
ブドウ糖が血液中に多くなると、膵臓からホルモンのインスリンが分泌されます。インスリンには主に二つの働きがあり、一つはブドウ糖を細胞の中に取り込む作用で、取り込まれたブドウ糖はエネルギーとして使われます。もう一つの働きは、余分に摂ったエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を肝臓の中で身体に蓄積される形の脂肪に変化させることで、血液中のブドウ糖が多くなって、インスリンが多く分泌されると作られる脂肪酸が多くなり、脂肪細胞の中に蓄積される中性脂肪が増えていくことになります。同じ甘さであっても、果糖のほうが太りにくいことになります。
果糖がインスリンの分泌に関係がないのはメリットであるとしても、ブドウ糖のように満腹中枢を刺激して食欲を抑える働きはありません。それでは食べすぎてしまい、かえって太ることになるのではないかと考えられることがあるのですが、その心配はありません。
甘いものを食べると落ち着き、安心感が得られることは多くの人が経験していることですが、その一つの理由として考えられているのはブドウ糖が脳の唯一のエネルギー源となっていることです。脳のブドウ糖が不足すると落ち着きがなくなり、イライラするほか記憶や集中力が低下する、脳の全身のコントロール機能が低下するなど、脳だけでなく全身の健康面にも影響が出てくることになります。食べたいものを我慢しすぎるとイライラしてダイエットが続かなくなるのは、脳のブドウ糖が減りすぎた結果とされます。
また、神経伝達物質のセロトニンはアミノ酸のトリプトファンから体内で合成されますが、トリプトファンはブドウ糖と結びつくと優先的に脳に運ばれることもイライラ解消と関係しています。
もう一つの安心感が得られる理由ですが、甘いものを食べると、その後にブドウ糖の作用によって脳のエネルギー源が補われることが長く経験されてきたことから、果糖による甘味であっても脳が安心感を得て、イライラが解消されると考えられています。大脳の前方にある前頭連合野は知的活動を行っている部分で、前頭連合野には食べ物の味を記憶して、おいしい、おいしくないといった情報も記憶されています。果糖が含まれたフルーツなどを食べた記憶が安心感を与えることでイライラが解消されるというわけです。
イライラ状態はエネルギー源だけでなく、ビタミンやミネラルが不足することでも起こりやすくなっています。ビタミンやミネラルが不足した状態だと、不足しているものを早く全身に届けるための反応としてストレスホルモンのアドレナリンが分泌されて、血圧が上昇します。このアドレナリンには興奮作用があり、イライラが強くなっていくので、ビタミンもミネラルも豊富に含まれているフルーツには精神を落ち着かせる効果があるというわけです。