栄養の話は医師がするものではない、と言うつもりは毛頭ないのですが、医師の全員が大学で栄養学を学んでいるわけではないのは事実です。どれくらいが学べているのかというと、医師を養成する医学部の中で栄養学講座があるのは3分の1にも達していません。これは教育の問題ではあるものの、少なからず保険制度にも関係があります。病院で栄養指導をして保険点数がつくのは管理栄養士だけで、医師が栄養指導を行っても“一銭にもならない”というのが現状です。だから、医師が一生懸命に学ばなくなってしまう、というところがあります。
なぜ、このようなことを書くのかというと、私の臨床栄養学の師匠は国立病院の栄養士団体の会長だった方で、日本栄養士会の理事長だったときに、管理栄養士の栄養指導でなければ保険点数がつかない制度が確立されたことを知っているからです。
病院に勤務する管理栄養士なら、栄養指導の専門家であるので、どんな人の指導もできると思いたいところですが、発達障害児のための発達栄養の研究を始めてから、そうではないと思うようになりました。発達障害児の中には極端な偏食がみられますが、単なる好き嫌いではなくて、感覚過敏によって食べられないという厳しい状況となっています。
それなのに、通常の好き嫌いの改善と同じように、食べられない食材を細かく切り刻んだり、すりつぶして料理に混ぜる、味付けを変えて出すといった、摂取が必要とされる食品を食べさせることに終始している例が多くみられます。それで解決できなかったという保護者の相談を受けることがあるのですが、感覚過敏の中でも食事に大きく影響する味覚過敏、嗅覚過敏がある子どもは小手先の対応だけでは食べられない食品を使ったことは見抜いてしまいます。
それで食べられなかったということで済めばよいものの、無理に食べさせようとした、隠して食べさせようとしたということで料理を作る人、食べるようにすすめる人のことが嫌いになり、そのために栄養摂取に偏りが出て、身体と脳の成長に悪影響が出ているということも少なくないのが事実です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)