業苦楽1 自業自得による苦と楽

「自業自得」という言葉があります。これは自分の行いの報いを自分が受けることで、一般には悪い行いによって悪い報いを受ける場合に使われます。元は仏教語で、自分のした善悪の行為で、自ら苦楽の結果を招くことを表しています。

これと似た意味の言葉としては「因果応報」がありますが、これも元は仏教語です。人は良い行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるという意味です。こちらも一般には悪い行いによって悪い報いがある場合に使われています。

しかし、自業自得も因果応報も、良い行いも悪い行いも表しています。それなのに、良いことをした結果として良いことが起こるという考えが広まっていないのは、よほど悪いことが起こっているのか、良い思いをしていない人が大多数を占めているのか、それとも別のことが起こっているのかとの考えが浮かんできます。

この「業苦楽」をテーマとしたコラムでは、別のことが起こっているのではないか、ということを考え、原因と対策など探っていくために、実際に“自業”によって苦しんでいる人、苦しみを経験して“楽”な状態となった人についても書いていきます。

テーマの「業苦楽」は「自業苦」の対比として使われている言葉で、浄土真宗の宗祖(開祖)の親鸞聖人の教えの中に出てきます。業苦楽は「ごくらく」、自業苦は「じごく」と読みます。多くの人が聞いたことがある極楽と地獄を別の文字で表したものです。

洒落や酔狂で当て字(漢字本来の意味に関係なく、音や訓を借りて当てはめた漢字)をしたわけではなくて、本来の意味を活かして極楽と地獄について説いています。

といっても、浄土真宗は他の仏教宗派とは違って、地獄は存在していません。その地獄は死んでから堕とされるところではなく、生きているときに身に降りかかってくるもので、いわば“生き地獄”と言うことができます。

この意味合いを理解してもらってから実例を見てもらいたいので、次回(業苦楽2)から浄土真宗の自業苦について書かせてもらいます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕