欺瞞錯誤3 お知らせと宣伝の境界線

民放(民間放送)のテレビ番組は、番組の内容と、その番組のスポンサーによるコマーシャル(広告収入)で成り立っています。コマーシャルを展開する企業などは広告宣伝費を使っていて、このうち番組の広告枠を購入する費用をCM費と呼んでいます。

テレビのCM費はタイムCMとスポットCMに分かれていて、番組スポンサーとして放送されるのがタイムCMです。「この番組は○○の提供でお送りします」というアナウンスとともに社名や商品・サービス名が流されています。

これは民放に限っての話で、公共放送の場合のスポンサーは受信料を支払っている国民です。そのため、「この番組は受信料でお送りしています」とアナウンスされることはないわけです。

広告宣伝に見えるような紹介であっても、公共放送では“お知らせ”と呼ばれます。公共放送には“宣伝”は存在していないわけです。

民放は、タイムCMとスポットCMだけが収入ではなくて、CM枠とは異なる“宣伝”もあり、これはタイアップCMと呼ばれています。もともとタイアップ(tie up)は、結びつくという意味で、ビジネスの世界では協力や提携の意味で使われています。

私が初めてテレビ局と関わったタイアップは、新譜のレコードと資料を無料で提供して、その代わりに番組の一部で紹介してもらうというもので、今ではCDやDVDに変わっています。

番組を制作するには時間も金もかかるので、その一部のネタを提供してくれたのは制作費を減らしてくれたということで、番組内で紹介をしてもらうことができます。この紹介が情報だけで終われば“お知らせ”、商品販売に直接的につながる場合(詳しい内容、価格、購入法など)には“宣伝”の役割を果たしてくれることになります。

その“お知らせ”と“宣伝”の境界線が、大きく変化した分岐点は2011年3月11日で、それから境界線は今も元の状態に戻ってはいません。
〔小林正人〕