商品やサービスを無償で提供する代わりにCM費が請求されることがないタイアップは、テレビの世界ではタイアップ番組、文字媒体(新聞や雑誌など)ではタイアップ記事と呼ばれています。
情報や記事を提供してもらって、その分のギャラ(費用、謝礼)が発生しない分だけ節約になるという当たり前のことに、あえて“タイアップ”という言葉を使うのは“純然たるタイアップ”ではない場合が少なからずあるからです。
タイムCMとスポットCMについては前回(欺瞞錯誤3)、“お知らせ”と“宣伝”の違いを例にして説明する流れで、タイアップCMについても触れました。タイアップCMは、一見するとタイアップのようでも、実際にはお金が動いていることを指しています。
以前はCM扱いされるようなことはなくて、取材の協力費の形で、かかった費用の分だけを出してくれるのがほとんどでした。
番組の中に取材を1本入れるだけでも、取材者・アナウンサー、カメラマン、音声マンの人件費、交通費、飲食費などがかかり、取材先によるものの10万円以上がかかるのが普通です。番組によっては3〜4か所に出向く、日帰りでは済まない遠方に出向く“豪勢な取材”もあります。
映像を撮りに行くのではなくて、取材先から映像を借りることもありますが、それでも無料で番組を制作するというわけにはいかないので、タイアップが費用のかかるタイアップCMになってしまいます。
これをスムーズに進めるためのタイアップ代理店も存在していて、どの局の、どの番組にタイアップを仕掛けるには、この会社という情報が当たり前に飛び交っていました。
ところが、宣伝広告費がテレビ業界よりもネット業界のほうが多くなり、テレビ局の広告収益が減ってきてから、タイアップCMが急に減りました。普通に考えると、広告収入が減って、制作費用が減るので、その分をタイアップCMで補うということになりそうです。
しかし、これでは賄いきれないほど広告収入が減り、根本的な見直しが行われました。
これまで定価があってないような状態であったタイアップの費用が、スポットCMと同様に定価をつけて販売されるようになり、広告主の意向に沿った取材先がインサートされるようになりました。
〔小林正人〕