欺瞞錯誤5 番組のタイアップ化

2011年3月11日の東日本大震災を契機に、テレビ番組と番組宣伝が大きく変わりました。当時は、テレビ番組に関わっていただけに、その急激な変化を身をもって感じて、お金の動きも大きく変わって、収益が得られなくなった例も数多くありました。

大震災の直後は、いつ緊急放送が入るかわからないのということから、番組内容が変わっても対応できるように、その番組中で放送しなければならないことは取り上げられなくなり、差し替え可能な内容ばかりになりました。

ニュース形態のバラエティ番組では、健康関連の情報は定番で、できるだけ新鮮なネタが喜ばれるということで、放送当日に販売される商品、提供されるサービスが多くを占めていました。

また、情報の信憑性を高めるために、専門家などが生放送に登場してコメントをするということが盛んに行われていたのですが、急に中止になったときには困ることもあるというので、専門家を呼ばずに、レギュラーのタレントが代わりに発言するというようになりました。

そのために、放送されたとしてもコメントの内容が“薄っぺらい”(私の発言ではなくて業界で言われていたこと)ものになって、せっかくの情報が正確に伝わらない、誤った情報が伝えられてしまうということにもなりました。

変化は、これで終わらず、いつ放送してもよいタイアップ番組が急に増えました。以前であれば、工場見学は企画提案をしても通らない“クソ企画”と揶揄されたものです。そこまで言われなくても、「こんな企画は出すものではない」と叱られたり、「楽をしようとするんじゃない」と企画の出し直しをさせられたものです。

ところが、工場見学や新商品開発の番組が増えて、タイムCMとスポットCMを定期的に出してくれている会社ばかりが登場するようになりました。これが番組そのもののタイアップ化で、それだけテレビ局の広告収入が減ってきた結果です。
〔小林正人〕