歩くことは誰から習ったのだろうか

歩いただけで両親や祖父母に誉められた幼少のときを除くと、歩くことを誉められたのは、いつであった、なかなか思い出すことができない、という人は多いと思います。骨折や骨粗鬆症になって、このまま歩けなくなるかもしれないと覚悟した人がリハビリテーションに取り組んで、なんとか歩けるようになったときに介護士や家族から誉められることはあるかもしれませんが、こういう誉められ方は、あまり望ましいことではありません。
スポーツをやっていて、そのフォームが素晴らしいと誉められることはあるでしょう。歩くスポーツがあれば、そのフォームは称賛に値するかもしれません。歩くのは健康によいことなのでスポーツと同じだと言っていた運動科学の研究者もいましたが、歩くことの代表のようなウォーキングもスポーツかと言われると首を傾げる人も少なくありません。
ウォーキングは、いろいろなスタイルがあるのですが、我が国のウォーキングの代表的な団体の一般社団法人日本ウオーキング協会ではマーチングリーグが採用されています。マーチングリーグというのは長距離を歩くことを目的としていて、日本ウオーキング協会が主催する全国規模のウオーキング大会では最長で50kmの3コースを3日間をかけて踏破するという驚きの大会もあります。
ちなみにウォーキングとウオーキングの両方の言葉が出てきていますが、間違いではなく、日本ウオーキング協会は、これが正式名称で、この協会が関わるのはウオーキングと呼ばれます。日本ウオーキング協会が認定する資格は健康ウオーキング指導士など、すべてウオーキングとなっています。
健康ウオーキング指導士をはじめとした指導者は、正しい歩行姿勢と歩行法を指導しています。その正しい姿勢と歩行法を身につけて、無理なく長距離を歩行していると誉めてもらえます。目標は地球1周分の4万kmです。カウントされるのはウオーキング大会で歩いた距離です。
正しい姿勢と歩行法に基本はありますが、何が正しいのかという判断基準は、目的に合った姿勢と歩行法になっているかということです。
長距離歩行には早歩きは相応しくないでしょうが、短時間で筋肉や心肺機能を鍛えようという人には早歩きも効果的です。30分以上歩かないと健康効果がない、というようなことを言う人がいますが、これは歩き始めてから30分を過ぎないと脂肪が効果的に燃焼しないことを指しています。血糖値が高い人が血液中のブドウ糖(血糖)を燃焼させようとしたら、ブドウ糖の燃焼から中性脂肪の燃焼に大きく切り替わる15分以内の歩行がよいことになります。この15分間の歩行を2〜3回繰り返したほうが健康効果は高いことになります。
となると、その目的に合った姿勢と歩行法が正しいことになります。このように何が正しいのかは目的が第一として、次には各人の状況や体調などに合っているかが判断基準になります。歩き方が誉められたら、その歩行法が最もよいと判断するのではなく、振り返ってみて、何を目的として歩くのか、それで効果が得られるのか、ということから正しいのか、誉められることなのかを考えるべきではないでしょうか。