歩くほど認知機能は向上するのか3

糖尿病と認知症の関係は以前から研究が進められてきました。その最新研究の一つですが、東京大学の研究グループは、2型糖尿病のインスリン抵抗性がアルツハイマー病のアミロイドβの蓄積を促進することを突き止めました。アミロイドβは認知症の中でも最も多いアルツハイマー病の患者の脳に特徴的にみられるタンパク質です。2型糖尿病がアルツハイマー病発症のリスクとなることから、2型糖尿病でよくみられるインスリン抵抗性がアルツハイマー病の発症を促進する可能性が、これまでも予測されてきました。
研究では脳にアミロイドβが蓄積するモデルマウスを用いて、高脂肪食によってインスリン抵抗性を誘発させて、インスリン抵抗性による影響を比較と解析が行われました。その結果、インスリンの低下作用そのものではなくて、インスリン抵抗性発症の要因となる代謝ストレスがアミロイドβの脳内除去速度を低下させて、蓄積を促進することを示しました。また、糖尿病のモデルマウスの脳内ではアミロイドβの除去速度が低下することで、アミロイドβの蓄積が増加する可能性も明らかにされています。
インスリン抵抗性は、膵臓からインスリンが分泌されているにも関わらず、細胞がインスリンに反応しにくくなって、細胞にブドウ糖を取り込めなくなっている状態を指しています。インスリン抵抗性は食事制限によってブドウ糖の摂取量を減らすことによって改善していくことが指摘されていて、食事制限をすれば脳のアミロイドβの蓄積を抑制できることが指摘されています。
インスリン抵抗性は有酸素運動によって改善することは多くの研究によって確認されていることから、認知機能改善のためのウォーキングが注目されています。ただ歩けばよいということではなくて、運動を始めたときには多くのエネルギーが一時的に必要になることからブドウ糖の消費が多くなります。勢いよく元気に歩くことで、ブドウ糖が筋繊維に多く取り込まれるようになり、筋肉が大きく収縮することで血流も促進します。脳細胞はブドウ糖が唯一のエネルギー源であることから、歩いてブドウ糖が脳細胞に多く取り込まれることは認知機能の維持と向上に役立つということです。