母子の栄養3 女性の食を巡る現状と課題

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、妊婦は妊娠中の母子の適切な栄養状態を維持して、正常な分娩(出産)をするために、妊娠前と比べて余分に摂取すべきと考えられるエネルギーと栄養素の摂取量が妊娠期別に負荷量として設定されています。また、授乳婦についても、同様に負荷量が示されています。

しかし、妊婦における「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の推奨量・目安量と現在の摂取量を比較すると、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの栄養素の摂取量が少ない状況にあります。

妊娠後に充分なビタミン、ミネラルを摂取しても間に合わないことがあり、また妊娠後に急激に食事を変えることは難しいため、妊娠前からの適切な栄養摂取が望まれています。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の推定エネルギー必要量と平成29年「国民健康・栄養調査」に基づいて摂取量を比較したところ、特に若年女性において充分にエネルギー源を摂取できていない状況が明らかになるなど、日本人の若年女性はエネルギー、栄養素などの摂取が充分ではないというデータが示されています。

また、エネルギー産生栄養素バランスについて、15歳から29歳までの女性では。脂質エネルギー比率が30%を超えており、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の目標量(20〜30%)を上回っています。

また、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度も、若年女性ほど少ないことが示されています。さらに妊娠を希望する女性は、胎児の神経管閉鎖障害発症リスク低減のために、充分な葉酸摂取(400μg/日)が必要になります。しかし、非妊娠時の30歳未満の女性の葉酸摂取量は300μg/日にも達していなくて、葉酸の摂取源の一つである緑黄色野菜の摂取量も充分ではありません。

「妊娠前からはじめる妊産婦の食生活指針」は、2006年(平成18年)に策定された「妊産婦のための食生活指針」を元に、新たなエビデンスを検証して、見直しを行ったものです。
今回の改訂では、妊娠前からの食生活の重要性を明確にして、妊娠前から適切な食習慣を形成することを目指して、名称が「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」に変更されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕